2019年5月4日、「MOMO(モモ)」3号機をベンチャー企業「インターステラテクノロジズ」が、北海道大樹町の打ち上げ実験場から宇宙空間まで打ち上げた。ホリエモンこと堀江貴文氏らが起業した民間企業が宇宙までロケットを飛ばすことに成功した。
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小型ロケット「MOMO(モモ)」3号機が、民間単独のロケットとして国内で初めて宇宙空間に到達。開発した宇宙ベンチャーの取締役、堀江貴文さんは「ほぼパーフェクトな打ち上げができた」と会見で笑顔。
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) 2019年5月4日
ホリエモンが目指している「宇宙空間」とは?
まず「宇宙空間」の定義だが、これは各国の領空の定義にもなるので、実は、議論は慎重だ。
つまり、スパイ航空機、スパイ衛星など「領空侵犯」となる高度を定義することとなるので、世界で同意が難しいのだ。おおよそ地表から100kmを超える地点が慣習として「宇宙空間」とされているようだ。
※ホリエモンのMOMO3号機は、高度113.4キロに到達している。
しかし、国際航空連盟 (FAI) は、地上から上空」100 km以上を宇宙空間と定義しているが、アメリカ空軍は80 km以上を宇宙空間としている。これは、大気圏などの物理的性質が変わるのは80km付近のようだからだ。
この裏には、スパイ器具の性能の問題が隠れている。
現在、北朝鮮の核ミサイル開発などを監視している軍事スパイ衛星の情報を掴む精度は、高度が低いほうが有利であることは間違いない。アメリカ軍が80kmと低めの高度にしていることの意味が、そこにあるだろう。宇宙飛行士の認定では違いがでてしまっているが、現在の技術レベルでは、問題とする必要もないことだ。
ホリエモンたちのロケットは113kmに達した。異論が出ない高度だ。ただし、真っすぐ昇っただけの、いわゆる弾道飛行だ。しかし、人工衛星打ち上げには、軌道を細かく制御することが必要だ。「慣性誘導装置」と言われる技術の完成を目指さねばならない。北朝鮮が「人工衛星打ち上げ」と称してICBMの実験をしているのは、誘導装置はICBM(大陸間弾道弾)と同じだからだ。
↓↓↓テスラのイーロン・マスク氏も、ロケット・宇宙船の開発・打ち上げといった宇宙輸送(商業軌道輸送サービス)を業務するスペースXを創設している。費用と品質を管理するために、大部分のコンポーネントを自社で開発。
【動画】2018年の試験飛行では、#イーロン・マスク 氏の車を載せて話題となった。#スペースX pic.twitter.com/iIIUAbMqI9
— ロイター.co.jp (@Reuters_co_jp) 2019年4月12日
ホリエモンが目指しているロケットには「品質管理」が絶対条件
これらの完成を目指すには、重大な技術開発が必要なのだ。それは「品質管理技術」である。
なぜなら、実験するということは、一度成功出来たら、次も間違いなく成功できる保証がないと、技術を積み上げることが出来ない。(ゴルフスイングでもこれができるとメキメキ上達するはずなのだが…)
今回、宇宙空間までロケットを打ち上げることが出来たとすると、次は、当然にそこまでは成功するとして、人工衛星の軌道に誘導する技術を目指していくこととなる。打ち上げに失敗していては、また第1回、2回目の実験と同じことを繰り返さねばならない。事実上、使い物にならない。「一度成功したら、次の成功を保証できる技術」が、技術には絶対に必要なのだ。
では、その技術はどうやって獲得したらよいのであろうか?
料理で言えば「レシピ」、仕事の場では「マニュアル」があることが多い。確かにそれは便利で、2度、3度と繰り返すとき非常に役立つこととなる。それでも、間違いは起きる。近年、自動車メーカーが起こしている品質問題では、「マニュアル無視」が横行している。「教育のやり直し」と叫んでいる専門家と称する人々もいる。
しかし、マニュアルでは不十分なのが実際。
製造工程では「冶具」などで、作業の確実性を高めることが古来から行われている。それでも1/10000の間違いを無くすことはなかなかできない。マニュアル整備や教育、訓練だけでは困難なレベルで自動車製造は行われている。
現在、「量産」を甘く見て、赤字に陥っているテスラのイーロン・マスクCEOが、この問題に突き当たっている。これを上からの「命令」で解決することは不可能だ。なぜなら、人間はそれほどの精度を持って作業できない。飛行機までいくと、その部品精度は「0.00000001」の精度を求められる。通常の人間作業では望むべきもないのだ。
では、どうやれば「品質保証」が出来るのであろうか?
同じ作り方を繰り返す「量産」の難しさ
量産では「同じ作り方を繰り返す」しかないのだが、それが難しい。
そのため「設備・マニュアル・教育」が必要不可欠だが、それでは不十分で、作業者全員の意思統一が必要となってくるのだ。現代の風潮で上から目線の「命令」で実現できると信じて疑わない専門家もいる。また「検査」が当然と考える向きもある。
しかし、その考え違いは、「生産数」によって違ってくることを考慮していない。
※ホリエモンは、「量産」「使い捨て」のロケットを目指しているという。イーロン・マスク氏のように「量産」技術を甘く見てないといいのだが…。
自動車産業(量産)などでは「検査」が多いと採算が取れない場合が多い。対して、ロケット産業(一品もの)では、検査して不良個所が判明したら修正することでもコストは収まる。
つまり、テスラがモデルSを生産してるぐらいであれば、利幅が多いことも手伝って「検査・修正」を繰り返しても利益が出せる見込みがある。しかし、”量産”のモデル3で、例えばドアの取り付けの数ミリのずれを完成検査の段階で見つけて修正していると、行き詰る恐れが出てくる。
ロケットは「一品料理」と言われるほど、生産台数が少ない。そのため効率的な製造のための専用機を用意できなくて、手作りに近い製造方法となる。それは同時に、「検査・修正」が許されることでもある。職人芸の世界なのだ。
IT業出身のテスラのイーロン・マスク氏は、製造工程の概念が欠落していた。そのため、頭の良いマスク氏は「理論的考察」ではEVが量産できると勘違いしていた。しかし、量産にはたくさんの人が関わり、たくさんの臨機応変の対応があり、製造が成り立つのだ。やっとこれが分かってきたテスラにとって、これからが本番だ。
ロケットの姿勢制御
ロケットの打ち上げでは姿勢制御が必要で、人工衛星を軌道に乗せるには、ロケットの進路を正確に定める必要が生じる。ホリエモンたちの「MOMO3号」が成し遂げた「宇宙空間に出る」弾道飛行とは次元の違う制御が必要だ。そのため、人工衛星打ち上げ技術を完成させれば、ICBMを作ることが出来る技術を獲得することが出来るのだ。
ロケットの操縦は,姿勢センサと制御コンピュータの二つの搭載装置の協調で行われます。M-Vロケットの姿勢センサには,光ファイバジャイロというものが用いられています。ジャイロとは,回転の速度を計るための機械です。どれだけの回転速度でどれくらいの時間だけ回転したかを計ってコンピュータで計算することによって,ロケットが回転した角度,つまり今どちらを向いているか(どういう姿勢か)を知ることができます。ジャイロには原理によっていろいろな種類があります。一昔前まではこまの原理を用いた機械式のジャイロが使われていましたが,機械式のジャイロはロケットのような激しい振動や大きな衝撃に弱いという欠点がありました。一方,光ファイバジャイロは機械的な部分がないので,M-Vロケットの振動や衝撃にも耐えて機能することができ,とてもわずかな姿勢の変化も察知することができるスグレモノなのです。
ミサイルには慣性誘導装置が付いているが、それはジャイロが基本となる。そのジャイロを支えるベアリングの精度は、なかなか実現できなかった。しかし、民生品の家電に属する「ビデオデッキ」のテープを誘導するローラーは、ビデオ画質を安定させる必要性から、軸受けに使われるベアリングがミサイルのそれより高精度であると言われてきた。
「人間性との格闘」が企業家の真実
「慣性誘導装置」は、「日本の宇宙開発・
当時は戦後間もなくのことで、世界は日本の再軍備を警戒していた。日本国内でも『原爆の開発は科学者の良心に反する』と言った思想が広く受け入れられていた。また、「学問の自由」が叫ばれ、「産学共同研究」などは”もってのほか”だった。学問とビジネスが癒着している現在とは、全然様相が違っていたのだ。
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現在、北朝鮮が「人工衛星」と称してロケット打ち上げ実験をしてきたが、これはICBMの開発の一環であると理解されている。しかし、ホリエモンがやったように、日本が民生品で小型ロケット打ち上げ技術を開発しても、それを「再軍備だ」と懸念する国は北朝鮮を含めても世界にはいないだろう。
ソフトウエア(IT)技術の広がりで、「製造」技術が軽視される世の中だ。しかし、「衣・食・住」どの人間の営みを考えても、「製造」しなければ、人間の物質生活は成り立たない。だから、ITによる制御技術は「製造」に繋がる効率を求める手段であると理解すれば、テスラのイーロン・マスク氏のように、作業員の人間性の価値を蔑むことなどできないのだ。
「品質管理」を突き詰めていくと、あらゆる意味で、『人間性との格闘』であることに気付くのだ。ホリエモンは逮捕された経験を持つが、企業家とは「人間性の格闘」の中で生きているものだ。人間性をコントロールできなければ、品質の良い製品を造ることはできない。
断っておくが、私は、20~30代は建機の部品を製造していた工場を経営しており、年上の職人と一緒に油まみれになって現場で働いた苦しい経験がある。机上論でこれを書いているわけではない。
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