【みんなが分かりづらい第4次産業革命(2)】テスラ、トヨタを理解できる産業革命の認識は「資金効率」

トヨタ・TNGA

学問的な産業革命の理解を丸覚えでは、これからの第4次産業革命を見通せないかもしれない。俯瞰してみて、そもそも産業革命とはどういうものなのか?を問い直してみよう。




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 テスラ・トヨタが理解できる産業革命の認識は「資金効率」

産業革命とはなにか? 技術革新に伴う「造り方の変化」と見ると分かりやすい。また、革命の目的が「資金効率」にあると認識できれば、現在のトヨタの考え方、テスラの革新的言動を理解できるだろう。

↓↓↓トヨタが企業としての戦略TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)を進化させている。これらの個々の技術に目が行きがちだが、経営の資金効率にどう影響があるのか考えてみるのが肝心。

工程結合が「資金効率」を生む

資金効率で見ると、「手工業から量産」に向かった動きでは蒸気機関も電動モーターも変わりはない。デジタル制御に替わっていく過程では、少々違っていた。それが「工程結合」の動きだったのだ。

↓↓↓「工程結合」が、在庫のムダなどどれほど「資金効率」を改善するかを考えてみる。

そして現在、インターネットにつながった状態では、究極の資金効率を目指して動き出している様子が分かる。しかし、ロット生産から抜け出せない工程もあり、「道のりははるか遠い」ことも分かりやすくなるはずだ。

「資金効率」の観点から産業革命を見てみると、【(1)ロット生産の始まり→(2)多種少量生産の推進→(3)受注生産への努力】と3段階に分けることが出来る。

(1)ロット生産は、蒸気機関でも、電動モーターでも効率は大きく違えども同じだ。(2)多種少量生産、つまり「トヨタ生産方式」になると、在庫が徹底的に省かれ、生産に必要な作業面積もはるかに少なくなり、受注から納品までの期間もはるかに短縮された。さらに、数値制御機械が登場することにより「工程結合」が加速され、これにより資金効率は大幅に削減された。

しかし、この現実を認識できる人材が限られているようだ。少なくとも2018年2月22日のこの番組の出演者には、全く理解できていなかった。これは日本経済の理解にも大変な痛手だ。

 

半世紀以上前から「トヨタ生産方式」が始まり、日本経済の高度成長が加速された。その時、トヨタ生産方式は資金量が数千分の1と考えられ、各製造業がこの後を追っていた事実と考え合わせると、日本国内では「大規模な金融緩和」が行われていたのと同じ効果があったはずと理解できる。現在の「じゃぶじゃぶ」と言われるほどの金融緩和と同じような効果で、需要も伸び給料も伸びて、相乗効果が出ていたものと考えられる。

現在、フランス、ドイツなど世界の製造業がトヨタ生産方式の後を追い、日本企業は現状”相対的優位を失い”、競争力を失ってきたものと見える。1980年ごろまでは、世界で「トヨタ生産方式」の概念で日本は世界をリードし、高度成長を成し遂げられたが、世界に「トヨタ生産方式」が浸透してくると共に、生産性の優位が日本全産業の生産性の低さをカバーする力もなくし、現在「切り札」を持たない状態と言えるのであろう。

そして…

(3)IoTによる産業革命だが、世間で言っている第4次産業革命の本筋は、「資金効率」の点から見ると「受注生産」により近づくことが出来る点にある。多種少量生産により現在進められている「順序生産」などの、受注から納品までを短期で済ますことが出来る先には「受注生産」がある。これが実現したとなれば、「在庫」は発生しない。現在、テスラがやっている予約販売で「前払い」は、ユーザーが待つ時間も逆の意味で資金効率が悪くなる。

 

産業革命をこの見方、つまり「資金効率」で見ると、これからIoTが果たす役割も見えてくる。開発しなければならない技術も明確になってくる。コネクテッドカーの機能の中には、産業革命の本筋でない技術も多数含まれるので、見誤らないことが必要だ。

しかし、材料から始まる生産工程では「受注生産出来るもの、出来る工程に限りがあり」、生産技術、製造技術のさらなる開発が進まないと実現できない。完成するのは、はるか先と言えるのであろう。

続きは:【第4次産業革命(3)】イーロン・マスクの果たす役割とトヨタが考える体制

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