学問的な産業革命の理解を丸覚えでは、これからの第4次産業革命を見通せないかもしれない。俯瞰してみて、そもそも産業革命とはどういうものなのか?を問い直してみよう。
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テスラ・トヨタが理解できる産業革命の認識は「資金効率」
産業革命とはなにか? 技術革新に伴う「造り方の変化」と見ると分かりやすい。また、革命の目的が「資金効率」にあると認識できれば、現在のトヨタの考え方、テスラの革新的言動を理解できるだろう。
↓↓↓トヨタが企業としての戦略TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)を進化させている。これらの個々の技術に目が行きがちだが、経営の資金効率にどう影響があるのか考えてみるのが肝心。
トヨタ、世界初の発進用ギヤを採用した無段変速機「Direct Shift-CVT」を開発 https://t.co/0Ls9H8yDHY #トヨタ #TNGA pic.twitter.com/1KSswiNIqg
— Car Watch (@car_watch) 2018年2月26日
工程結合が「資金効率」を生む
資金効率で見ると、「手工業から量産」に向かった動きでは蒸気機関も電動モーターも変わりはない。デジタル制御に替わっていく過程では、少々違っていた。それが「工程結合」の動きだったのだ。
↓↓↓「工程結合」が、在庫のムダなどどれほど「資金効率」を改善するかを考えてみる。
【経】【投資の真髄:トヨタ生産方式(7)】新日鉄シャーリング工場との工程結合 (財経新聞) https://t.co/UMqJzo70Gx 部品製作の工程では、どうしても大量の鉄板を保管しなければならず、工場面積では単なる倉庫と化している場所が多く見受けられていた。加工作業の…
— 経済ニュース (@twinews1) 2017年9月17日
そして現在、インターネットにつながった状態では、究極の資金効率を目指して動き出している様子が分かる。しかし、ロット生産から抜け出せない工程もあり、「道のりははるか遠い」ことも分かりやすくなるはずだ。
「資金効率」の観点から産業革命を見てみると、【(1)ロット生産の始まり→(2)多種少量生産の推進→(3)受注生産への努力】と3段階に分けることが出来る。
(1)ロット生産は、蒸気機関でも、電動モーターでも効率は大きく違えども同じだ。(2)多種少量生産、つまり「トヨタ生産方式」になると、在庫が徹底的に省かれ、生産に必要な作業面積もはるかに少なくなり、受注から納品までの期間もはるかに短縮された。さらに、数値制御機械が登場することにより「工程結合」が加速され、これにより資金効率は大幅に削減された。
しかし、この現実を認識できる人材が限られているようだ。少なくとも2018年2月22日のこの番組の出演者には、全く理解できていなかった。これは日本経済の理解にも大変な痛手だ。
半世紀以上前から「トヨタ生産方式」が始まり、日本経済の高度成長が加速された。その時、トヨタ生産方式は資金量が数千分の1と考えられ、各製造業がこの後を追っていた事実と考え合わせると、日本国内では「大規模な金融緩和」が行われていたのと同じ効果があったはずと理解できる。現在の「じゃぶじゃぶ」と言われるほどの金融緩和と同じような効果で、需要も伸び給料も伸びて、相乗効果が出ていたものと考えられる。
現在、フランス、ドイツなど世界の製造業がトヨタ生産方式の後を追い、日本企業は現状”相対的優位を失い”、競争力を失ってきたものと見える。1980年ごろまでは、世界で「トヨタ生産方式」の概念で日本は世界をリードし、高度成長を成し遂げられたが、世界に「トヨタ生産方式」が浸透してくると共に、生産性の優位が日本全産業の生産性の低さをカバーする力もなくし、現在「切り札」を持たない状態と言えるのであろう。
そして…
(3)IoTによる産業革命だが、世間で言っている第4次産業革命の本筋は、「資金効率」の点から見ると「受注生産」により近づくことが出来る点にある。多種少量生産により現在進められている「順序生産」などの、受注から納品までを短期で済ますことが出来る先には「受注生産」がある。これが実現したとなれば、「在庫」は発生しない。現在、テスラがやっている予約販売で「前払い」は、ユーザーが待つ時間も逆の意味で資金効率が悪くなる。
産業革命をこの見方、つまり「資金効率」で見ると、これからIoTが果たす役割も見えてくる。開発しなければならない技術も明確になってくる。コネクテッドカーの機能の中には、産業革命の本筋でない技術も多数含まれるので、見誤らないことが必要だ。
しかし、材料から始まる生産工程では「受注生産出来るもの、出来る工程に限りがあり」、生産技術、製造技術のさらなる開発が進まないと実現できない。完成するのは、はるか先と言えるのであろう。
続きは:【第4次産業革命(3)】イーロン・マスクの果たす役割とトヨタが考える体制
➡自動車EV化の流れ(上) テスラとトヨタの違い ジャーナリストたちの戸惑い 「火力発電+EVは本当にエコ?」
➡【テスラは何を間違えたのか(1)】ファイナンスは経営のすべてではない 天才は必要なし