コロナ禍で、医療現場の方たちをバックアップするためにトヨタが支援して、医療用防護ガウンの生産を100倍にしました。病院ではマスクや防護服(医療ガウン)などの消耗品も大量にいるわけで、そういう戦略物資の供給を切れないようにするのは重要です。ここでは、テレビCMトヨタイムズでも放映されている支援現場について、皆さんに知ってもらいたくコラムします。
トヨタ生産方式を使うと、1日500枚が1000枚は簡単!!(動画)
まずは、トヨタイムズの香川編集長(俳優の香川照之氏)が医療カッパを生産する工場に突撃取材する動画をご覧ください!
皆さん、ご覧になって印象に残ったところはどんなところだったでしょう。だけど、トヨタ生産方式やカイゼンを行っている事業者であれば、毎日当然のことなのです。
どんなところであれ、それぞれが結果に直結していることを実感して、コロナ禍であっても、自分の商売にも役立てられるきっかけになってくれればと思うのです。
これは、トヨタ生産方式を生産工場でも物販でも実践して、成果を上げてきた者だからこそ言えることでもあるのです。
動画で見たトヨタ生産方式のスゴイところ
トヨタが動いたのが速かった!!!
医療用防護服の増産を経産省から依頼された、名古屋の老舗雨ガッパメーカー船橋株式会社さんが新聞に告知を出して、すぐにトヨタから電話がかかってきて、2日後には8人やってきた!!!
船橋(株)の舟橋社長はこうおっしゃってます。
最初は1人、2人で来ると思っていたら、いきなりおっちゃんが8人来たというのも驚きましたし。…
「次の日から入ります」となったときに、8人どころか20人、30人来るということで、ここまで力を入れていただけるか、ということにびっくりした…引用:トヨタイムズ
さすがやることが速い!
善は急げ!です!
作業改善にはトイレットペーパーの芯を使う!(コストはかけない)
動画を見てわかる通り、「トヨタのカイゼン」にはお金、つまりコストがかかっていないことが多いのです。頭を使うだけで、つまり知恵を使うだけでやれることは結構多いものです。
どこかの大手ゴルフ事業者の幹部が「カイゼンにはコストがかかるから…」といって実施せずに上場廃止になっていったことが記憶に鮮明に残っていますが、これを見たらそれは言わせません。
●トイレットペーパーの芯を使ってだれが作業してもわかるようにハサミの置き場を作る。●シートの枚数が見にくかったら置台の下地の色を見やすい色に変更する。●素材の静電気を防ぐためにサランラップの芯を山積みにして取りやすいようにする。●古い設備は廃棄するのではなく修理して使う。●次の工程を隣で行えるように場所を整える。●検品(傷などをチェック)するための設備は専用機ではなく安い代用品で済ませる。●梱包するための折り畳み機は100円ショップで購入したもので自作する。etc.
地道なカイゼンには、費用のかかる自動機械を入れなくても実現できるものがあるのです。
これによって、1工程でどれくらいの枚数が増えていったかを、動画を見てよく確認してくださいね。
トヨタイムズの香川編集長も、以下のように言ってます。
本当にこれだけの改善があり、びっくりすることがたくさんありました。でも、それが決して大きな改善じゃなくて、小さなことだったりするのに、大きな結果が出て、非常に驚くような経験を僕もさせていただいた…
引用:トヨタイムズ
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できないと思っていたことが、できるように!!!(500枚→6000枚)
船橋さんの森工場長は、こうおっしゃってます。
われわれはこんな大量生産をやったことないと、さっきも申し上げたんですけど、最初は500枚。それが1000枚になり、2000枚になりました。以前のわれわれでしたら、2000枚になった時点でたぶん満足してたんじゃないかと思います。
高橋さん(トヨタ 生産調査部 高橋智和氏)が「船橋だったら5000枚いける」って言ったとき「何言ってるんだ、この人?」って正直思ったんですけど。6月の頭に3000枚になったんですよ。3000枚になったときは本当に「もう限界だ」と思ったんですけど、今はもう6000枚できるんですよ
引用:トヨタイムズ
これってPCR検査を増やすのに応用できない?
日本ではまだまだPCR不要論が、頑なに渦巻いてます。ニューヨークでは、「PCR検査を増やして、さらに複数回行い、陽性者を陰性者に近づけない」ことでパンデミックを収束し、実証されたにもかかわらずです。
でもこれが、やはり厚労省の利権のためという論調も出てきました。
一方では、「PCR検査を増やすと医療従事者の負担になるから」という理由も多いようです。しかし、PCR検査の自動機は日本製で各国で信頼されて使用されているものもあり、一回に多くの検体を処理できます。しかも、検査時間は短縮できます。それを使用すれば効率が上がることは目に見えています。
それに、(例に挙げて申し訳ないですが)今回の記事の船橋(株)さんのようにそれまでの体制を維持したままだと生産量を上げられなかったというのと同様に、現在の検査体制を維持したままでは検査量が増えないのは当たり前です。トヨタ生産方式のカイゼンを倣って、作業改善するだけで効率があげられるものも絶対あるはずです。
何らかの理由で、現在の体制を崩したくない人々がいるのではないでしょうか?
『日本人はできない理由を言うのがうまい』
これは、カルロス・ゴーン氏が日本に来た当初言ったことです。
でも、やる気があれば、知恵を絞ればできることは多いのです。そして、複数の人が寄り集まって知恵を結集させれば、叶うのです。
舟橋社長は、こうおっしゃってます。
有志連合については、「仕事を出す側」「受ける側」、昔でいうと「元受け」「下請け」という立場ではなくて、それぞれの分野での強みを生かす。われわれは溶着、ある会社では畳みとか、それぞれの強みを生かしたアイデアをお互いに学び合う。だから私どもの会社もほかの会社に畳みのやり方というのを学びに行ったりとか。
当初から100倍になったのは、お互い学び合う姿勢、お互いに改善し合うことで、ここまで来られたんだなと思っております
引用:トヨタイムズ
できるようになると、みんなモチベーションが上がる
船橋さんが旧態依然としていたら、作業効率を上げられるのに気づかずどうしていたことでしょう。
でも、いざカイゼンができるようになり、生産量が目に見えて増えていくと社員のモチベーションも上がるものです。
船橋さんの森工場長は、こう言います。
その原動力になったのが、「みんなが昨日の記録を超えよう」という気持ち。モチベーションをずっと維持していくれているというのが、大きな原因かなと。日々成長している自分に、それぞれが喜びを感じて成長していっている姿を見て、本当に頭が下がる思いです
引用:トヨタイムズ
そして、自分からカイゼンのアイデアを自ら提案するようにもなります。
これが、「トヨタのカイゼン」の副次的効果であり、相乗効果によってより効率が上がることになります。社員の結束も強くなります。
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「ノルマ」じゃなくて「問題点の管理」で不良品をなくす(生産記録板→生産管理板)
事業をやっていると、人間だから必ず不良は起きる。
だから、これも大事なキモです!
「生産管理板」というのはトヨタの現場にはどこでもあります。ところが(船橋に)われわれが入ったころは、「生産記録板」なんですよ、数字だけを追っていたと。数字だけを追うと不良品も出ますし、欠品も出ます。「それは違うよね」と。異常が起きたということは、出るべきものが止まっているんでしょ。その問題点を書いてくれ、その問題点を改善していこう、と。
この生産管理板も、実をいうと人材育成なんですね。これによって人を育てる。われわれの現場も生産管理板がキモとなっています。それはトヨタに入ったときから。そうやって先輩に教えられながら。「改善を止めない」ということで、ずっと頑張っています
引用:トヨタイムズ
こうして、トヨタという大会社は日本一の企業であり続けているのです。意外にも、現場ではこういった地道な作業の積み上げでできています。
「技術は外から買ってくればいい」「人材は使い捨てでいい」と経営していると、ふと気づいたときには手元に大事な資産(技術や人材)が残っておらず、進歩もできなくなっていた…ということになるのです。
「昨日より今日、今日より明日」と思って作業をし続ける。こういった強い基盤があるからこそ、生き残り続けることができるのかもしれません。
↓↓↓「最初から答えを与えてはいかん。考えさせる。考える作業者を作るんだ」「悪いのは作業者じゃない。働き方を教えていない管理者の方だ」「トヨタ生産方式とは、考える人間を作るシステムです」
参考:『こわける前に直す」トヨタの保全マンがどこよりも多いワケ
トヨタ史上初公開「保全という仕事」(プレジデント オンライン)
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