【えっ?セールスしないの?】新しい日産の売り方はライフスタイルの変化とらえられる?

日記

日産が、「積極的にセールスしない(売らない)ディーラー」を本格的に稼働させる。お客さんに「クルマを体験してもらう」ことを目的として【ブランド体験型店舗】と呼び、接客を行うのは営業マンではなく?【日産ブランドクルー】なのだという。でも、自動車ファンとしてもコンサルとしても、「やっと動き出したか!」という感は否めない。いったい、どんな販売方法なのか?ユーザーとしての経験談、コンサルとしての見立てを記しておこう。



 

2020年の車種別販売台数を見ると、売れるクルマが変わっっているようだ。つまり、コロナ禍でライフスタイルが変化しているのだ。だから、売れるクルマも変わっていくのは当然。「クルマの必要性」の意味も見直されている。

具体的には、コロナ禍によって「海外・国内旅行が出来ない」「外食が思うようにできない」ことなどから、資金の流れも変わりつつあるから、「クルマの売り方」も変わらなければいけないだろう。

そこで、日産自動車がクルマを売らない営業活動を始めた。「HELLO NISSAN」である。

 

ディーラーの対応悪くて、ユーザーの不満がたまっている!

まずは、

ネット上で「ディーラー 不満」と検索をかけてみよう。すると、出てくるわ出てくる!

【ディーラーの対応が悪い(; ・`д・´)!】

ともらしている人々は、私以外にもたくさんいるのだと大いに確認できる。

コンサル視点からいつも分析しているのだが、最近の大手自動車メーカーの営業手法で目に付いていたのは、「売れる客に営業をかけろ!」「すぐに買わない客にかまうな!」といった販売施策が幅を利かせていたことだ。

「客は儲けのターゲット」と言った理解が進んで、「お客様は神様」「商売は信用第一」と言った古風とも言える【商売の鉄則】を打ち破っていた。つまり、できるだけコストをかけない「営業コスト優先の考え方」で進んでいるのが現在だ。だから、ユーザーの不満がたまる

しかし2020年始まったコロナ禍で、年間を通じて販売台数が世界中で落ち込んだ自動車メーカーは、焦っているのか生き残りをかけて模索しているようだ。

その中でも日産は、特段の事情がある。カルロス・ゴーン元会長が追放されて以後の立て直し時期に、新型コロナウイルスのパンデミックに遭遇してしまい、販売台数から見ても窮地は明らかだ。

そして2021年に入り、「やっちゃえ日産」で「HELLO NISSAN」を展開し始めた理由は何なのであろか?

 

これがスバルの挑戦?「お客様との距離を近づける」?

さて、つい最近の経験談だ。

ちょっと前、スバルを名乗る電話が入った。「先日の整備以後、クルマの調子はいかがですか?」…。

発信元の分からない電話であったので詐欺電話を警戒した。相手は若い女性の声で、慣れた話し方と言うよりは「事務的早口」で、こちらの警戒する気持ちを受け止める気配はなく、一方的に話を進める。

10年以上スバルと付き合ってきたが、ディーラーからハガキが送られてくることはあっても「整備後の電話」など一度もなかった。それどころか「調子が悪いエンジン」を放置し続けていた。発進時のエンジンのもたつきが治らないのだ。

直す意思も見せていない状態のまま10年が過ぎ、定期整備でもそのことに触れることもなくなってしまった。このクルマは既に維持しているだけで、ほとんど乗らないクルマとなっていた。

そんな状況下の、「突然の電話」である。

「今回の定期整備は問題ないが・・・エンジンは不調のままだよ」と話すと、「整備のことは分からない」との返事だった。整備後の調子を聞いてきていながら、整備のことが分からないのである!?「外注なのかい?」と尋ねてみると素直に認めた。

その後、スバルの担当営業マンに訊ねると、「お客様との距離を少しでも近づけるためです」とのことだった。???

えっ??? 距離を近づけたいのに見知らぬ外注先の、整備を知らない女性に「整備後の調子」を尋ねさせる神経はどうしたことであろう。理解に苦しむ…。

こういったことは、他メーカーのディーラーでも起こっていることが、検索してみると出てくる。

業績が落ちているスバルが焦っていることはよくわかった出来事だった。

「あきれた営業感覚」とだけ言っておこう。

 

日産の挑戦、【売らないディーラー】では専任の日産ブランドクルーが対応

そんな中、日産自動車がクルマを売らない販売(営業)活動を始めた。「HELLO NISSAN」である。

日産の技術をゆっくり味わってください」とのコンセプトだ。さらに、「セールスを目的としない」ことが明示された。「売らないディーラー」である。

これからは、「営業所が営業しない」で専任の「日産ブランドクルー」が案内するようだ。これまでの「販売効率を上げる」目的を掲げて、客応対を絞り込んできているのとは真逆だ。

例えばこれまでは、ディーラーでは埒が明かないため本社の「お客様相談室」に技術的問題を尋ねてみると、”1回は応答する”がやはり技術的にわけの分からない回答が返ってくるため”2回目の質問”をすると、「問題があるのですか?」と突き放して、それ以上の対応を拒んできたこともあった。

だから、これから「日産ブランドクルー」は車の技術的な案内もユーザーにできなくては意味はないだろう。何しろ「日産の先進技術」を存分に味わってもらうのが目的だからだ。それが、日産のクルマ(商品)の良さだからだ。

現在は、「すぐに買う人でなければ客ではない」としてコストダウンをしてきている。そうした「営業効率をコンサル」する外注企業の指南も受けているだろう。「目先、買う気が高い客に集中する」ことで売上アップを図り、すぐに買わない客を「余計?」としてコストを抑える取り組みだ。だから、お客さんの不満がたまっていた。

しかし、これでは中・長期的には「市場は縮小」するのはわかっていて、現実に自動車の販売台数は減ってきており、自動車市場の縮小は起きている。「ポスレジのバカ(顕在市場だけに注目し潜在市場を切り捨てる)」を実践する「営業の素人」達だ。

こうした「在来の営業素人」からすると、今回の「日産ブランドクルー」はムダなコストとなるはずなのだが、考えを変えたのだろうか

「売らないディーラー」は何をするのだろうか?

 

ライフスタイルの変化を読み取って、市場創造

コロナ禍で、車の所有を見直す動きがある。

公共交通機関、ライドシェア、カーシェアなどの共有では、感染の危険があるのは明らかだ。だから、家族だけでクルマで移動すれば危険は少なくなる。また、テレワークが広まったため、首都圏を離れて郊外に居住する動きも加速している。企業にとっても「交通費・事務所費用」の負担が少なくなって歓迎すべき動きだが、ガバナンスの低下が心配されている。

こうした「ライフスタイル」の変化によって需要の移動が急激に起きるのは当然となる。「飲食店」の売上が激減し、「スーパー」などの売上が伸びるのも自然な動きだ。クルマ市場の衰退は所得に関係するのだが、それだけでなく「ライフスタイルの変化」が大きいと考えられる。

また、その背景としてもう1つ考えられるのは、クルマの「メカニズム」に関する興味がかなり薄れていることが挙げられる。「性能」よりも「スタイル」や「色」で決める人が大変増えた。「走る性能」よりも「居住性、使い勝手」が優先される。そんな状況下でも、トヨタ・ヤリスの販売好調ぶりは、クルマ本来の「走る性能」に注目する人が潜在的にいることを示しているのではないだろうか。

ライフスタイルの変化、市場の動向を深読みしてみると、市場創造の道が開ける。

 

日産、遅すぎ戦略的施策? 縄張り解除してファンを増やす

今回の日産自動車の「HELLO NISSAN」の施策は、こうしたクルマ市場の基礎に働きかけ、目先の売上ではなく「市場創造」を狙ったものだ。

先進技術体験プログラムとして、試乗車には長時間試乗ができる体験コースが用意されており、特に「スカイライン」についてはプロパイロット2.0の機能を体験するため、高速道路の試乗を含めた120分の体験コースも用意されているらしい。

これは、日産の特徴である「技術レベルの高さ」をアピールし、「日産ファン」を作り出す動きだ。

だから、ディーラーのショールームはお客様の場所(縄張り)として、日産の技術を十分に味わう場所とするのが良い。つまり「日産ディーラー側の縄張りを解除してお客様の縄張り」とするのが良いのだ。店舗営業の鉄則だ。

このことは営業の基本で、日産ブランドの「足腰」の強化とも言える多くの「日産ファン」を作り出すことになる。どのような市場でも「ファン」を作り出すことが重要で、これまでの営業コストから考え出された「一本釣り営業」は真っ向から反する動きだったのだ。だから、ファンを作るどころか不満が続出する。

「HELLO NISSAN」はこうしたこれまでの間違った営業方針を刷新して「市場創造」に乗り出すこととなるだろう。

でも、自動車市場の縮小に対抗して、これからこの施策で間に合うのだろうか? 「遅すぎ戦略的施策」となっているのではないのか?

これまでのコストを削減する目的で「今、購買意欲の高い顧客に集中する」のは「潜在市場を失っていた」ことを肝に銘じて、新しい施策を全うしてほしい。

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クルマ営業は一生涯の付き合い

クルマは消費財ではあるが、整備を含めて商品と言える。

だから、本来はユーザーと長期の付き合いを基本としているはずで、「信頼関係」の構築が必須な要件となる。

何もしなくても売れたバブル期からずっと続いた「カウンターセールス」から「ルートセールス」に回帰する動きが、前出のスバルの事例にみられるごとく始まったようだが、「営業ノウハウの無さ」が目立つ。

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今後は、改めて営業戦略の基本を作り上げておかないと、販売店のみならずメーカーも「インダストリー4.0」に置いていかれるだろう。ネット社会を正確に理解することも必要だ。生産においては、「受注方式」と「生産方式」とが結合され、BMWが実験しているように、ユーザーが望む多数の(100を超える)オプションに対応できるAIシステム構築が急がれている。

BMWのこの実験は、さらに販売側が「お客様目線」を取る必要があることを示している。自動車販売店、ディーラーは「お客様のわがままをどれだけかなえられるのか?」が勝負となると心得るべきだ。つまり、これからはAIの能力を使って、「オーダーメイド」に近い注文を「安く・速く・高品質」でかなえることだ。