【トヨタ・C-HR】TNGA第2弾「本物の資金効率」(3)

トヨタ・TNGA

トヨタ自動車のTNGA(Toyota New Global Architecture)に、プリウスに次ぐ適合車第2弾として、C-HRが発売になりました。TNGAについては大きな誤解が社会に蔓延しているようです。以下の記事についてもかなりの誤解があるようで、「資金効率」についての知識として見てみたいと思います。写真出典:http://toyota.jp/c-hr/grade/g/?padid=ag341_from_chr_grade_grade_g_detail_thumb 



日経ものづくり(日本経済新聞 電子版)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO11725360W7A110C1000000/
設計・生産の効率2割向上 トヨタのクルマづくり改革
2017/2/15 6:30

➡【トヨタ・C-HR】TNGA第2弾「本物の資金効率」(2)

➡【トヨタ・C-HR】TNGA第2弾「本物の資金効率」(1)

 

日経ものづくり(日本経済新聞 電子版)の記者にしってほしいこと

設計・生産の効率2割向上 トヨタのクルマづくり改革
出典:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO11725360W7A110C1000000/

この記事を書いた記者は大変よくTNGAを取材し、学んだことが伝わってきます。けれど、生産現場を知らないことで、どの時点の生産方式を基準にしてTNGAを見るべきかの基点を誤ったようです。

「多種少量生産は1日にしてならず」で、生産方式というのは、半世紀にも及ぶ現場の担当者から社長までの真剣な努力のたまものです。

しかも、経営者よりも現場の担当者たちの力が90%であると言ってもよいのでしょう。

けっして「机上論」ではなく、新しい考え方を展開する力は、並大抵のものではありませんその経緯について、つぶさに語れる人材もまた一握りです。


現在では、生産ラインの構造も、より「屋台(多数の工程を一人で組み立てる方式・セル生産方式)」に近づいているのでしょう。横ラインではなく一人で完成まで組み立てる縦の流れがこれを可能にしてきました。

私は、これを「工程結合」と呼び、自社工場でカイゼン活動を実際にやった人間です。新日鉄の溶鉱炉から、組み立てライン、完成車販売までを繋げることを夢見て、半世紀前「髪の毛から爪の中まで油まみれになって」徹夜で努力したのでした。

きっかけは、実に小さなアイディアからでした。

旋盤加工では、必ずと言ってよいほど1工程と2工程が必要でした。それを「連続して加工(工程結合)出来たら、1回在庫管理がいらないね」といった発想からでした。そして、コンピュータ制御の旋盤を導入するとき、それを可能にするチャンスがやってきました。

その努力のおかげで、私も体を壊してしまいました。昼夜を問わない稼働を続けなければ、日常業務の納期に遅れてしまう中で必死で問題の解決に取り組んだのです。

1工程2工程共通の治具を開発することは容易ではありませんでした。

しかし、「日経ものづくり」の記事の中では同様のことを、一行に満たない記述で済まされてしまいます。

❝まず、加工や組み付けの治工具の基準を統一して共通化する。❞

このように、経済ニュースでは1行で済まされてしまうことですが、実際は、これまでの発想から出て完成するには1工程で1年ほどもかかりました。その中身は、技術的な問題だけでなく新しいことに挑戦する勇気のある社員の出現と、それを邪魔する社員との駆け引きなど、人間関係や組織の作り方、運用など、管理技術の取り組みでもありました。

努力の甲斐があり、ようやく完成して日常業務として稼働し始めると、加工時間が1/5になったことよりも、中間在庫が一工程分なくなったことによる在庫場所の減少、運搬の減少、管理手間の減少など、計り知れない手間暇の減少が見られました。

これはコストダウンであり、総資金量の減少であり、資金効率の目覚ましい向上であることを実感したのでした。これを全工程に展開していくには、さらなる管理技術の開発も必要であることを知りました。

半世紀前その時の無理がたたり、こうしてキーボードを打っていても、むち打ち症のために背中がひどく痛んでくるのですが、資金効率の意味を人に説いているときは、逆に力になるのです。

出典:http://toyota.jp/c-hr/performance/eng_hv/?padid=ag341_from_chr_top_eng_hv01#

「日経ものづくり」(日本経済新聞)に望むこと

このメディアの記者たちに望むのは、「ものづくり」はいつも「資金効率との戦い」であることを学んでほしいということです。そして現在の視点をどのレベルに置くべきかを真剣に検討してほしいと思います。

具体的には、18世紀に第1次産業革命が起きてから、フォード方式、GM方式を経て、20世紀のトヨタ方式に至るまでの壮大さを意識して、そして現在、ヨーロッパ諸国を中心に進められている第4次産業革命とも言われる動きを捉えることです。

その中に、TNGAはああるのです。

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