【大塚家具の経営混乱】父と娘が対立、で考える家具屋の「会員制」について

集客の達人(経営)

この記事は、メールマガジン「集客の達人」からの引用(2015/4/17配信分)です。筆者は三河恵。「知恵の輪サイト」の主催者と同様です。



大塚家具の「会員制」について

●久美子氏と勝久氏の路線の違いで、最も象徴的に言われているのが「会員制」でありましょうか・?
これまでの会員制を排して「気軽に入れる店」にするのが、久美子氏の主張であると言われています。完全に廃止するのかは分かりませんが、(中期経営計画)によると、廃止の方向に感じます。
http://www.idc-otsuka.jp/company/ir/tanshin/h-27/h27-2-25.pdf

 


●ところで、「会員制」と、廃止するのとで、何がどう違うのでしょうか?
父・勝久氏、久美子氏は、その違いを分かっているのでしょうか・?
「会員制」は「閉じられた世界」、「気軽に入れる店」とは「無記名で誰でも入れる店」と言えるでしょうか?
そもそも「気軽に入れる店」とは、いかなるものでしょうか・・・?

●10年ほど前、私が横浜の大塚家具を初めて訪れた時、入り口で署名を求められ、待たねばならなかったので引き返してきました。久美子氏は、この状態を「気軽に入れない」と理解しているのでしょう。
2度目、今度は、会員になることを覚悟の上で訪れ、案内を受けながら、2~3時間かけて見て歩きました。でも結局は、何も買わずに帰ってきました。
その後、大塚家具からは何も接触はなく、生涯、大塚家具からは何も買っていません。まずはこの展開を、覚えておいてください。

気軽に入れる店、会員制の店

●一方、IKEAに買い物に行った時、レジに自分で商品を運び並んだ時、周りの皆さんの視線を浴びているのを感じました。私の買い物が、多いのです。多くのお客様は、インテリアグッズなど小物を少々買うだけで、家具を買っている人は、全体の数割なのです。私は、リゾート用1軒分の買い物をしたいのですが、とても1回では買い切れず、数回に分けていても多いのです。
また、IKEAのレストランコーナーはかなりの面積でありましたが、席が開かない状態で行列でした。これが「気軽に入れる」の意味です。

●大塚家具の店内の場合は、5~6フロアーであったと思いますが、店内で出会った客数は数組でした。もちろん、全て営業マンが付いている状態です。私も、かなり熱心に説明を求めながら、実際に触れながら、値段を聞きながら、見ていたのです。これが「会員制」です。

「会員制」は「気軽に入れない」とするのは、「敷居が高い」と表現するのが正しいでしょう。そのかわり、会員になった人は「購買意欲が高い」人々です。
一方、「気軽に入れる」とする店では、客数は多いのですが、アウトレットのように、購買意欲はさほどでもありません。この「集客メカニズム」の違いを考えてみてください。

●お客様が、実際に購買行動に入るまでには、沢山のステップがあることを、意識してみてください。「お店を知る」ことから始まり、「購入後、次に買うものを決めてお帰りいただく」までの間、少なくとも数ステップあることを意識できているでしょうか・・? このステップを埋めることが、集客テクニックです。

(1)三河著、PHP研究所【常識外れの集客テクニック】
(2)当メールマガジン【集客の達人】(隔週配信)
などで、集客テクニックの基礎として繰り返し説明してきましたが、まず、この「お客様の心境の違い」の中に「市場」は存在すること、つまり「市場はお客様の心の中にある」ことを理解してください。

●久美子氏の考えていると思われる集客メカニズムは、このお客様が購買行動に入るまでのほぼ全ステップを「店内」で行うシステムです。現代のマーケティング理論では、どうしてもこの様になるので、「市場創造」に打って出る概念が生まれません。久美子氏は、大変、現代の学問的理論を勉強されているのでしょう。星野リゾートのマーケットリサーチに通ずる、市場に対する理解です。
そして、この、多くの現代マーケティング専門家達がイメージする集客メカニズムは、ボリュームゾーンに適合する「品揃え」を行い、「待ち」うけます。これを、三河は、「売れ筋を追うな」「ポスレジのバカ」など、激しい言葉でこの動きをいさめてきました。

●一方で「会員制」は、その多くのステップを、「広告宣伝」によりお客様に昇ってもらっています。つまり来店した時には、勝負はついています。言い換えると、「会員制」では、購買意欲が極めて高いお客様しかいないのです。
この父・勝久氏の天才的テクニックは、沢山の弱点も持っています。それが、縮小する市場では、現れてきます。
久美子氏が、勝久氏の広告がムダであると考えて削減すれば、「会員制」は成り立ちません。お客様が、来店動作に達するまで、購買動機が高まらないのです。勝久氏が広告を重要視し、久美子氏が「ムダ」と考えるのは、この認識の違いです。久美子氏には、会員制で集客するメカニズムが見えないのです。
また、勝久氏には、この「会員制」のメカニズムを技術体系として説明できないのです。➡大塚家具に限らず、派閥争いの後は…(次の記事へ)