瀬戸際の【大塚家具】久美子社長にミラクルは起きるのか? ゴルフ業界も同じ運命?切り札はオリンピック?!

アコーディア・ゴルフ

2018年での業績回復を目指す、大塚久美子社長の切り札は、ずばり「オリンピック特需」だろう。

2月に都内で決算説明会を開いた、大塚家具。2017年12月期決算は、2期連続の大幅赤字で、2015年12月期に約110億円あった現預金は約18億円にまで減少したという。久美子氏が社長に就任してから3年。業績は下がる一方の大塚家具。家賃減額をめぐって、三井不動産との間に訴訟も起こっている。これから挽回は可能なのだろうか?(記事投稿直後、8月3日に、大塚家具がスポンサー企業探しを進めていることが日経ビジネスの取材で分かった。ついに身売りが秒読みになったのか?)



 

大塚家具、2018年の戦略は「オリンピック特需」

2015年、父・勝久氏と覇権争いを起こし、長女の久美子氏が勝利して、勝久氏を事実上追い出した格好だった。織田信長、武田信玄など昔の武家社会では、こんなお家騒動ではよくあることだったが、長女に追い出されたのが現代的と言えるのだろうか?

売上高は、2015年の約580憶円から、2017年の410憶円まで大幅に落ち込み、営業利益は、8.43憶円の黒字から▲51億円余りの赤字で、前期の▲46億円余りからも拡大した。

これは危機的状況だ。株主も危機感を強めて社長交代を考えている状況だ。

しかし、久美子社長は、「2018年12月期の売上予想は、11.2%増の456億6,300万円」として、2018年度の営業利益は2憶円程度を見込んで黒字化できるとした。常識的には、これは久美子社長としては最後の賭けに出たものと理解できるが、果たして本人の認識はどうなのだろう?

V字回復を信用する裏付けとしては、『店舗売上は横ばいだが、卸売部門の(ホテル向けなど)コントラクトは、3倍の売上約60億円に伸びる』としたことだ。これは、オリンピック特需でホテルの増改築が伸びており、ありえないことではない。

仮にオリンピック特需のある限りは、業績回復が見込まれることを是としても、その後の販売政策はどのようなものであろうか?これについては、久美子社長の考え方を見てみることにしよう。

 

久美子社長の営業方針

お家騒動は、営業方針の違いではなく、後継者争い

2015年の株主総会での久美子社長は、当時の勝久社長の私物化による、コーポレートガバナンスの問題提起が主張であったが、本当のところは後継者争いで、母親の千代子氏が長男の勝之氏を推していたことに反発したのであろう。苦労して、現実の企業経営をしていたところに「家命」として交代させられる不条理は同感させられるところだ。

問題は、実際のところでは、勝久氏と久美子氏の経営方針の争いではなかったと推察できることだ。それは、久美子氏の営業方針があまりにも素人と見えることで、営業方針・経営方針などの次元での意見の違いではないと考えられる。

 

父・勝久氏の営業方針のメリット

勝久氏の営業方法は「会員制」だった。久美子社長は、この「高級路線はもう古い」と言っていた。

これは、会員となってからでないと店の中に入れない仕組みだった。私も実際に会員になって、3時間近くかけて店を見せてもらった経験がある。この売り方は「会員名簿がある」ことが最大の強みだった。店舗に足を踏み入れるお客は、すでに「購買動機」が高い人たちで、いわゆる「冷やかし客」が大きくはじき返されている。会員になると、営業マンが一人ついて案内してくれるなど、特別待遇の接客を受けることになる。

※注:一般の販売では、「購買動機」を作るまでにステップがかなりあるし、来店するお客様は必ずしも購買動機が高いとは言えない。

これが、「一人当たりの購入高(売上)」を高めることになり、来店客数に対する「購買率」の高さになっていた。

また、この売り方だと「結婚・引っ越し・リホーム・新築」など、まとまった需要を取り込むことが出来、さらに「高級家具」の客を取り込むことが出来る仕組みだ。しかし、バブル経済崩壊やリーマンショックなどで、価格帯が低下してくる時代がやってきており、勝久氏の販売方法に疑問が出てきたことも確かであろう。

※参考の過去記事【大塚家具の経営混乱】父と娘が対立、で考える家具屋の「会員制」について

 

久美子社長の営業方針の方が「古かった」!

しかし、久美子社長が、新しい大塚家具で低価格帯に進出するにしても、名簿を捨て、全くの来店フリーにした売り方では、客層も販売方法も、売れ筋商品も違ってしまうことを理解できなかったのであろうか

さらには、久美子社長は「広告費をムダ」としていたが、名簿がない中では広告をしないと、お客様を「待つ」ことになり、旧態依然とした「小売業のこれまでの常識」でしかない。(私の理論では、「待ち」の姿勢は在庫量が多く、回収するまでの時間が長いので資金効率が数倍悪いと考える。「提案型」の広告と店づくりで打って出ることにより資金の回転は数十倍の効率にできる可能性がある

つまり、久美子社長の「販売政策」はちっとも革新的ではなく、逆さまの旧態に戻すことだった。それは、勝久氏の販売方法よりも昔からある方法であると言える。

 

「資金と物流と市場」の関係性を理解できていない久美子社長

家具市場では、ニトリが2015年度4,581憶円から2017年度5,720憶円と、売り上げを順調に上げているなど、家具業界が特別不況ということではない。

ニトリの商売では、商品企画まで自社で主導し、製造工程もマネージメントして、家具市場の低価格帯の需要を取り込んでいった。高級家具の市場では、父の勝久氏が立ち上げた「匠大塚」が前に立ちふさがる格好になっている。家具市場において、久美子氏の大塚家具は、上下から挟まれているのだ。

ニトリ、匠大塚いずれも、製造から関与していることを久美子氏は知らないわけはないだろう。そこに、久美子社長の大塚家具は仕入れて展示するだけで、広告費もムダとしていると、「売り方の戦略はない」としか言えない。まことに、市場分析をせずに稚拙としか言いようがない。

 

昨年の株主総会では、大型店ではなく小型店を数多く出店展開するとしたが、これも商品力を補い、低下する売り上げを上昇させる策ではない

むしろ、大型店に比べ、面積当たりの家賃が増え、コストアップ要因になってしまう。

↓↓↓高額の家賃が負担になり、訴訟も。

さらには、小型店を展開するのは、本来、地域の眠った需要(潜在市場)を喚起するためで、それは、主に低価格帯の日常品の市場に向いた施策だ。むしろニトリなどでは積極策と考えることが出来る。

久美子社長は、小売業のこれまでの”教科書的な勉強”をしているのであろう。現在、置かれた大塚家具の立場には似つかわしくない策であると言える。”現場を知らない”久美子社長の考えやすいことだが、上記の策は今やらなければならないこととは違う。

「市場と物流と資金」の関係性を理解しなければならない。

おそらくは、商品在庫が増えて、資金の回転率が下がっているはずだ。トヨタのTNGAの逆さまをやってしまっていることになる。「販売政策」と「決算技術など金融知識」との整合性が取れていないのが見て取れる。

 

また当時、大塚家具の株式10.13%を持っていた米国の投資会社「ブランデス・インベストメント・パートナーズ」だが、久美子氏の販売政策では通用しないだろう市場の情勢を見抜けなかったことが、誠に不思議だ。これは、アメリカファンドが経営者に要求している能力が、ビジネスモデルに沿った施策ではなく、その時の自分達の投資の都合でしかないことを示している

 

かつてゴルフ業界も、この餌食に…

これは、かつてのアコーディア・ゴルフの旧経営陣(彼らはゴールドマンサックス(GS)に選ばれたエリートのごとく感じているようだったが…)と同じ間違いかもしれない。

GSの狙いは、ゴルフ場のビジネスモデルなどどうでもよく、どれだけの投資効果を短期間で得られるのしか関心はなかったし、ゴルフ場運営のビジネスモデルの経営技術はないに等しいことと同じだ。

「ブランデス・インベストメント・パートナーズ」も大塚久美子氏に期待したのは、単に高い配当、株価上昇などであった可能性が高い。だから、アメリカンファンドに経営ノウハウがあるとするのは幻想であり、禁物だ。また仮にあったとしても、短期しか考えていないことが、その企業の従業員や社会にとって問題だ。

 

大塚久美子氏としての最後の賭け

2018年、黒字回復を株主総会で約束した久美子社長だが、その切り札は「オリンピック特需」だ。売上高を400憶円余りに落としてしまったことは、逆に現在のニトリなどとの競合の中では、勝久氏のこれまで取ってきた「会員制」の在り方の改良で進むべきだったと言える。

率直に、久美子社長の販売施策はかなりの素人である。しかし、「若い女性」があこがれる方法である。それを勝久氏の販売方法に組み合わせる方策が、ニトリに対抗できる唯一の方法であろうと考える。

ニトリはかなりのスピードで拡大しているが、その施策は「製造から販売」まで通している。そこは、IKEA、勝久旧大塚家具、匠大塚、ニトリそしてユニクロと共通するところだ。

そして、久美子社長の思考でおかしなところは、「他人の気持ち・立場」を理解できていないことだ。つまり、市場=お客様、そして従業員の気持ちを理解できていない。優秀な頭脳と言われているが、大塚家具のこの結果を見て、たとえこれから回復することが出来たとしても、異常であると感じないほうが難しい。家具市場ではニトリをはじめ順調だ。市場のボリュームゾーンの変化や、ニトリのアイディアが光るが、一人だけ大塚家具がこれほど落ち込むことは、経営に間違いがあったことは確かなのだ。株主も大きな判断ミスを犯したことになる。

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2018年度で黒字回復が出来なかった場合、久美子社長は辞任する覚悟であるとした経営計画だ。少なくとも常識ではそう見える。

また、未だに配当しているようだが、これは経営者としては配当をやめる決断が欲しかったところだ。

これが、現在の上場企業が置かれている「株主優先」の弊害と見ることもできる。社員の権利はどこへ行ったのか? 配当をやめ社員に分配するのならともかく、資金を温存するのが順当であろう。一方で、勝久氏が「匠大塚」を創ったたことで、匠や社員に向けた罪滅ぼしとなり、現在の久美子大塚家具を締め付けることにもなったことは、因縁なのであろうか?

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