自動車EV化の流れ(上) テスラとトヨタの違い ジャーナリストたちの戸惑い 「火力発電+EVは本当にエコ?」

エンジン

2018年が始まりましたが、自動車産業の話題はEV化についてです。この話題でまず感じたのは、「自動車ジャーナリスト」たちの「的外れ」な記事でした。多くの論調では「日本車はEVに後れて遅れている」「トヨタは“カイゼン”で改革は出来ない」といったものでした。自動車ジャーナリストたちの限界を感じると共に、真実をユーザーに伝えない「あくどさ」に気付いていない情けなさを感じています。

一方で、テスラの評価は異常に高く、その原因は「株投資の思惑」のみにあることを冷静に見る必要があります。そしてソフト(IT)産業などとは違い、製造業の多面的な奥の深さを思い知らされています。



「クリーンディーゼルに関する不正」から始まった

EVブームの始まりは、実はフォルクスワーゲン(VW)の不正から始まっています。それはどうしてか?

省燃費では、トヨタがハイブリッド技術で先行してきました。それに対抗する技術として、EUではクリーディーゼルで対抗していたのです。高速走行の多いEUでは、JC08モード規制の日本のHVでは苦しいところです。

80km/h以上の高速走行では、トヨタのHVよりもマツダのクリーンディゼルのほうが燃費は優れているのでしょう。ホンダ方式のHVでは80km/h以上ではエンジン直結としています。これ以上の高速では、モーターよりもエンジンのほうが効率が高いからです。

しかし、「トヨタ・電気式CVT」とカタログに記載してきたエンジンとモーターのトルクミックス方式が、現状世界一の省燃費性能を見せています。それでも80km/h以上ではエンジン直結となっています。そして、トヨタ方式を上回ることはすぐには出来ないであろう、とヨーロッパ勢は感じているのです。

技術的にHVに対抗できないための「トヨタ潰し」

そんな中、VWの燃費不正が発覚したとき、ヨーロッパ勢は焦ったことでしょう。そこで、国策としてHVを通り越して一気にEV化を進める施策に出てきたのです。これがEVブームの始まりです。EUの燃費規制計算方式では、PHEV方式を取ると、燃費計算は実態を無視して有利に働くように設定されました。そして、HVは省燃費技術と認められなくなったのです。これは政策的な「トヨタ潰し」に他ならないのです。

アメリカの規制は、同じようにHVは省燃費車と認めなくなりましたが、一歩進んだ燃費規制を実施しようとする意識とトヨタ潰しが重なっているものです。過去、プリウスの独走を止めようと「欠陥車扱い」した事実がアメリカにはあります。

このように、現在の燃費規制は多分に政治の匂いがします。

 

発電方式との関連、「火力発電+EVは本当にエコ?」

また大事なことは、自動車のEV化には、発電方式が火力発電では意味がないのです。自動車自体が排気ガスを出さなくなっても、EVに供給する電気の発電が効率の悪い石炭発電では、悪化することも考えられるのです。


中国のEV化宣言は、この意味では問題があります。ドイツは自然エネルギーで発電する方式に移行していますので、EV化は意味のあるものです。フランスも原子力発電が主力ですのでEV化は意味があります。

しかし、ドイツは現在、自然エネルギー発電に変えていくために電気代金の高騰があり、結局「失敗ではないか?」との声が上がり始まりました。フランスは、福島の原発事故の影響によって、原子力発電そのものの見直しがあり得る状況です。

中国はもともと自動車産業がなく、これから産業として育てるのでは、とてもEU、日本勢などに対抗するのが難しい情勢で、EVは環境問題というよりも産業振興の意味合いが強い政策です。現在の中国企業のEVは、とても世界で通用するものではない情勢です。

 

トヨタ叩きをするジャーナリストたち

なぜか「“カイゼン”でトヨタは足を引っ張られて改革は出来ない」と言った、大学教授を含めて批判が出ています。その内容を読んでみると、とても専門家とは言えない論調なのです。「売名行為」ともとれる話で、「製造業」を知らない人たちでした。

また、自動車ジャーナリストの多くは「メーカーの批判」をしません。それは接待を受けていたり、そうでなくとも自動車の評価記事を書こうと思うと、「車の提供」(試乗)など、自動車メーカの協力なくしてはジャーナリストの仕事が出来ないのが実情だからです。そのためVWの、「人類に対する裏切り」とも言える不正が発覚しても、通常通り新車発表を報道したりしていました。また「メーカーから仕事がもらえるのが自動車ジャーナリストだ」と言い切るジャーナリストまで存在しています。つまり「メーカーの宣伝マン」の位置づけが自動車ジャーナリストの現実となっています。

その背景には、自動車の専門家と言っても「自動車産業」「製造業」などには素人であり、とても現在の自動車メーカー各社が置かれた情勢を評論する知識がないのです。トヨタが推し進める「TNGA」やマツダのスカイアクティブ・テクノロジーなど、製造技術・生産技術・管理技術・経営技術などについて素人である人がほとんどです。そのためEV化についても「おかしな論調」が多く存在します。つづく(最近、CEOイーロン・マスク率いるテスラモーターズのニュースでは、生産体制の不備が目についてきました。新車生産は遅れており、株価も…)

 

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