2026年度(令和8年度)の小中学生学力テストとは、文部科学省が全国の小学6年生と中学3年生を対象に4月〜5月に実施した「全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)」のことです。
その結果が段階的に発表されつつあります。
そこで気になったのが、「思考力」と「表現力」が落ちているという、データから読み取れる事実のことです。
うちの孫でもちょっと気になるかな~。SNSの短い文章のやり取りばかりしてるから…。
そもそも日本人は人にはっきりと自分の考えを論理だてて伝えることが苦手で、直感的になりやすい傾向がある。全体と歩調を合わせて(周囲の空気を読んで)協調性の方を重視する(談合みたいに悪用されると困るが…)。
これは海外と比べても、コミュケーションの違いが鮮明になる部分。
でも、グローバル化が進む中、海外のように「自分の意見を客観的な事実として相手にはっきりと伝える」、つまり、感覚的な主観ではなく客観的に思考して、考えを筋道立ててはっきりと表現する(伝達する)ことができるようにならないと、ビジネスの現場では困ることが多くなるはず。
そこで、今回のニュースを備忘録としてまとめておきたい。
文科省が全国学力調査の結果を公表(朝日小学生新聞・2026.07.18)

この記事を要約すると、
2026年度の全国学力調査では、小学6年生と中学3年生を対象に国語・算数(数学)などの学力を調査しました。
小6では国語61.1%、算数56.6%、中3では国語64.2%、数学57.4%が全国平均正答率でした。算数・数学では思考力や判断力を問う問題、英語では「書く」「話す」力を問う問題の正答率が低い傾向が見られました。
なお、文科省は年度によって問題の難易度が異なるため、2026年度と2025年度の正答率を単純に比較することはできないとしています。
一応、比較表としておきましょう。
平均正答率の比較
| 学年・教科 | 2025年度 | 2026年度 | 差 |
|---|---|---|---|
| 小6・国語 | 67.0% | 61.1% | ▲5.9pt |
| 小6・算数 | 58.2% | 56.6% | ▲1.6pt |
| 中3・国語 | 54.6% | 64.2% | +9.6pt |
| 中3・数学 | 48.8% | 57.4% | +8.6pt |
| 中3・英語 | ― | IRTスコア499 | ― |
※英語は2026年度からIRT(項目反応理論)によるスコアで示され、平均は499。2025年度とは単純比較できません。
ざっくり見ると、2026年度は「小学生は国語・算数とも低下、中学生は国語・数学とも上昇」という結果です。ただし、これは問題の難易度が年度によって違うため、直ちに「小学生の学力が低下した」「中学生の学力が向上した」と判断するのは適切ではありません。
なお、文科省は8月3日に、さらに踏み込んだ全国データの分析結果も公表しています。
【全国学力テスト】2026年度分析結果公表、国語・英語に共通の弱点は「根拠を示す力」(教育業界ニュース リシード・2026.8.4)

ではこの記事も要約しておきます。
8月3日に、2026年度(令和8年度)「全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)」の分析結果が文科省から公表されたのです。
2026年度の全国学力テストの詳細分析では、「知識を覚えているか」だけでなく、それを使って自分の考えを説明する力に課題があることが明らかになりました。

これって最近会話していても、なんとなく感じるな~。
あれも知ってるこれも知ってる…、だけどその用語説明できる?どうしてそうなるの?ってなると説明できない…。だから問題はどこ?どうやって解決して前進する?って前向きな議論にならない…。
- 国語:自分の考えと、その根拠を区別して文章で説明する力に課題。(客観性)
- 算数・数学:図形や割合など、知識を具体的な場面で活用する力に課題。(客観性)
- 英語:聞く・読む力に比べ、自分の考えを理由とともに「話す・書く」力が弱い。(表現力)
- 一方、主体的に学習する子ども、ICT活用に自信がある子ども、読書が好きな子どもほど正答率が高いという傾向も確認された。
特に英語では、「賛成・反対」といった自分の意見だけなら言えるものの、「なぜそう思うのか」という理由まで英語で即興的に説明することが難しいという実態が浮き彫りになりました。
つまり、国語の「自分の考えと、その根拠を区別して」、算数・数学の「図形や割合など、知識を具体的な場面で活用する」などは客観的、俯瞰的に見る力がないと難しくなってくる。
では、客観的に見るとはどういうこと?
主観的:自分の気持ち、好み、思い込み、経験が中心になる見方。
客観的:誰が見ても同じように確認できる事実や、他人から見た姿が中心になる見方。
だから、客観的に見るには主観(自分の感情)をいったん切り離し、事実と自分の意見とは切り分ける。そして、相手の立場だったらどう思うか、どう行動するかを想像してみる。
こんな思考回路が必要。
算数や数学的に見るのなら、今の位置が全体から見てどの辺にあるのか(いるのか)を想像してみる。
例えば、勉強が目標に向かってどの程度の割合で進んでいるのか?社会から見て自分はどんな存在なのか?多数なのか、少数なのか?社会には何の割合が少なくてみんなから必要とされているのか?など。
グラフのようにある尺度を持って物事を見てみる。
教科別に見ると
| 教科 | 主な課題 | 特に低かった問題 |
|---|---|---|
| 国語 | 考えと根拠を区別して表現する | 小6:33.6% 中3:39.3% |
| 算数・数学 | 図形・割合などを具体的に活用する | 一部問題で4割未満 |
| 英語・話す | 自分の考え+理由を英語で説明する | 25.8% |
| 英語・書く | 自分の考えを英語で表現する | 28.4% |
今回の結果から見える大きなポイント
今回の調査を一言でまとめるなら、
「知っている」から「使って説明する」への移行に課題がある
ということなのかも。

つまり知識ばかり蓄積しても、その物事の「なぜ」を他人にわかりやすく説明したり、その知識を活用して現実の問題解決に役立てなければ意味がないよね(*^^*)
つまり、その知識を理解して応用できるようにならなければ、それは他人の知識の受け売りであって自分の知識にはなっていない…。
知識を応用できるようになると、社会で仕事をするようになっても問題解決能力が高いと評価されるようになるよ!
例えば国語なら、単に資料を読めるだけではなく、「資料から分かった事実」→「だから私はこう考える」という形で説明することが求められています。
数学でも、公式を覚えているだけではなく、図形や割合を現実の場面と結び付けて考える力が問われています。
そして英語では、それがさらに明確で、「I agree.(賛成です)」で終わらず、「because(なぜなら)……」まで自分で考えて話す力が求められています。
また、質問紙調査では、主体的な学習(自ら考える・行動する)、ICT(PCやタブレットを使用した情報通信技術)への自信、読書習慣などと正答率に一定の関連が見られました。
ただし、これは「読書をすれば必ず学力が上がる」という因果関係を示したものではなく、あくまで関連する傾向として捉える必要があります。
なお、今回の8月3日の発表は全国データを使った第2弾の分析で、今後は9月以降に都道府県・指定都市別の分析結果が公表される予定です。
全国学力調査、SNS利用長いほど正答率低く…文科相8/4会見(教育業界ニュース リシード・2026.8.5)

この記事をわかりやすく表にまとめると、
| 調査結果 | 文科省の考え・対応 |
|---|
| 主体的・対話的で深い学び → 学力が高い傾向 | 今後の教育でも重視 |
| SNS・動画の利用時間が長い → 学力が低い傾向 | 利用ルール・情報モラル教育を推進 |
| ICT活用に自信がある → 学力が高い傾向 | 情報活用能力を強化 |
| 英語の「聞く・読む」は比較的良好 | 一定の成果 |
| 英語の「話す・書く+理由を説明」は低調 | 表現力・実践力を強化 |
| 授業以外の学習時間は2021年度以降減少 | 学習時間減少への対応も課題 |
3つの調査結果を合わせると?
ここまでの3つの資料をまとめると、今回の全国学力調査から見えてくるのは、
「知識を覚える力」だけではなく、「自分で考え、情報を使い、理由をつけて人に伝える力」が今後ますます重要になる
という方向性です。
そして興味深いのが、ICTそのものは悪者ではないという点です。
「SNS・動画を長時間利用する」ことと「ICTを学習に活用する」ことでは、調査結果が逆方向になっています。
つまり、
「デジタルを使わせない教育」ではなく、
「デジタルを正しく使いこなす教育」
にしなければならないようです。
これは、AIについても同じことが言えますね。
「なぜ」を考えることが大事!
ここで、Forbes JAPAN の「これからの時代「HOW」より「WHY」が重要な理由」もご紹介しておきます。

政策研究大学院大学名誉教授の黒川清氏と、脳科学・教育分野で活動する青砥瑞人氏が、AI時代に人間が身につけるべき力と、これからの教育のあり方について語っています。
2人が共通して重視するのは、「How(どうやるか)」ではなく「Why(なぜなのか)」を追究する学びです。
- 知識を覚えるだけでは不十分
- AIやコンピューターは、知識や情報処理では人間を上回る。
- 本や授業から「How」の知識を得るだけでなく、「なぜ?」と問い、自分で考えることが重要。
- 実体験が「Why」の原点になる
- 青砥氏は、子どもの頃の野球で感じた疑問をきっかけに脳科学に興味を持った。
- 実際に体験すると、そこから「なぜこうなるのか?」という好奇心が生まれる。
- そのため、教育では子どもの疑問をすぐに答えで終わらせず、一緒に探究することが重要。
- 「好き」を学びの出発点にする
- ゲーム、スポーツ、音楽など、子どもが夢中になるものを「なぜ好きなのか?」と掘り下げることで、探究心や学習につなげられる。
- 大人が答えを教えるのではなく、子どもと一緒に「Why」を探すことが大切。
- 感性・創造性はAI時代の武器になる
- AIは、言語化・パターン化できる領域で非常に強い。
- 一方、人間には感覚、想像力、創造性、直感、曖昧さを捉える力がある。
- こうした能力も、スポーツや芸術などと同じように、実体験を積み重ねることで育てられる。
- 教育における「評価」のあり方も変える必要がある
- 作文、絵画、音楽などの創造的な活動に対して、単純な点数や評価で意欲を奪うべきではない。
- 「もっとこうすれば良くなる」という改善につながるフィードバックを重視し、創造性を発揮し続けられる環境を作ることが重要。
この記事を一言でいうと
AIに勝つために知識を増やすのではなく、AIには代替しにくい「Whyを問う力」「実体験から得る感性」「想像力・創造力」を育てることが、これからの教育の重要なテーマになる。
そして、先ほどの2026年度全国学力テストの話と並べると、かなり面白いつながりがあります。
全国学力テストでは、「考える力・表現する力」や「自分の考えに理由を付けて説明する力」に課題が見られました。一方、この記事では、そのさらに先にある能力として、「そもそも自分はなぜそう思うのか?」と問い続ける力を重視しています。
つまり、

知識を覚える → 考える → 理由を説明する → 「なぜ?」を自ら問い続ける → 実体験から新しいものを創造する。
そう、人間として生きるなら、今まで決まったことをやるだけでなく、新しいものを創造してみることにチャレンジしないともったいないよね!
教育の重点もそうなっていくべきでしょう。
なぜトヨタが世界一の自動車メーカーなのか? ➡「なぜを5回」繰り返すから
トヨタ生産方式を実践して理解している筆者ですが、その教えの1つが「なぜなぜ5回」です。
トヨタグループは、2025年の世界販売台数が約1,132万台を記録し、ドイツのフォルクスワーゲン等を抑えて6年連続で世界1位を達成しています。
さらに、2026年上半期(1〜6月)も約539万台を販売し、首位を維持しています。
このパワーの中に隠れているトヨタの文化の1つが、「なぜなぜ5回」なのです。
東洋経済の「トヨタ人の合言葉「なぜなぜ5回」の威力 社歴40年のトレーナーたちが語る」の記事を引用してみましょう。

トヨタでは「失敗」という言葉をあまり使わず、「問題」や「不良」と捉えます。問題は原因を突き止めて解決できるものであり、重要なのは諦めずに挽回して前に進むことだと考えています。
その考え方は、次の5つに整理できます。
① 「失敗」ではなく「問題」と考える
一時的にうまくいかなくても、それを「失敗」と決めつけず、原因を探して改善する機会と捉えます。
そのため、管理監督者の評価項目にも「粘り強さ」が含まれています。問題が解決するまで諦めない姿勢が、トヨタの現場に受け継がれています。
② 「なぜ?」を繰り返して真因を探す
トヨタで有名な**「なぜなぜ5回」**は、個人を責めるためのものではありません。
「なぜそんなことをしたのか」と責任を追及するのではなく、
「何が起こったのか?」
という視点で、問題の根本原因まで掘り下げます。
そして、個人を叱るのではなく、同じ問題が二度と起きない仕組みを作ることを目指します。
③ 目先の「火消し」だけで終わらせない
トラブルが起きたとき、できる人が自分で仕事を引き受ければ、一時的には問題が解決します。
しかし、それでは根本的な改善にはなりません。
例えば新人の仕事が回らないなら、誰かが毎回手伝うのではなく、
教育する → 作業方法を見直す → 新人だけでも仕事が回る仕組みにする
というところまで考える必要があります。
つまり、「問題を解決する」だけではなく「問題が起きにくい仕組みを作る」ことが重要です。
④ 忘れたい失敗ほど「記録」する
失敗は忘れてしまうと、同じことを繰り返します。
そこでトヨタでは、問題について
「何が起きたか → 原因は何か → どう対策したか」
を記録し、組織内で共有します。
品質会議や「振り返りシート」などを通じて、個人の経験を会社全体の知識・財産に変えていきます。
⑤ 「挑戦して失敗した経験」は成長の財産
特に重要なのが、挑戦した結果としての失敗です。
難しい仕事に挑戦して失敗した経験は、その人の技能を高めます。さらに、その失敗のプロセスを記録・共有すれば、他の社員も同じ失敗を避けることができます。
つまり、
個人の失敗 → 個人の学び → チームの知識 → 組織全体の改善
へと変えていくわけです。
この記事の核心
一言でまとめるなら、
「失敗しない人」を育てるのではなく、「失敗や問題から学び、次の改善につなげられる人」を育てるのがトヨタ流。
ということです。
そして、これは先ほどの「Whyを問う教育」とも非常につながります。
「なぜ失敗したのか?」を考え、原因を掘り下げ、実際に改善し、さらにその経験を記録して次に生かす。
つまりトヨタの「なぜなぜ5回」は、単なる品質管理手法ではなく、「Why → 実体験 → 探究 → 改善」という学習サイクルそのものと見ることもできます。
AI時代の教育という先ほどの記事と並べると、**「知識を覚える」→「Whyを問う」→「実際にやってみる」→「失敗する」→「原因を考える」→「改善する」**という、人間の学び方の重要性がより鮮明になります。