BMWの車種名の付け方で、「2・4・6・8の偶数」はクーペボディーとしてきた。だから、「X」シリーズ、つまりSUVのジャンルで、X2・X4はクーペルーフを持っている。SUVのクーペとはなんぞや?? 違和感がいっぱいの私は「年寄り世代」だが、BMW X2の車高は1535mm。1550mm機械式駐車場に入れることは、日本の都会の事情では助かる寸法なのだ。
そこで、気になるBMW X2のサイズ。
全長×全幅×全高(ミリ)=4375×1825×1535。
幅1550ミリ、高さ1850ミリ以下の機械式駐車場には、入れるサイズとなっている。しかし、古いタイプの機械式駐車場には要注意。
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前世代のBMWのデザイン全般では先進性を追いかけていたのだが、現在のデザイナーチームは「オーソドックス」になっている。「つまらん」と言った意見も聞くし、「キドニーグリルは、豚の鼻」と言った意見も聞く。そうした新しい世代に、どのようにして伝統を継承していくのかは、いつの時代でも難問ではある。
BMW、ポルシェ、ベンツ、アウディもSUVの流れの中にあり、売り上げの主力をSUVに移しつつある。ポルシェの売り上げの7割はSUVだというのでビックリだが、これも世界的流れだ。セダンが売れなくなりつつあり、セダンであるトヨタ・カムリも、その流れを意識する中でモデルチェンジされた。
SUVのデザインの特徴
SUVは「走る性能」じゃなく…
SUVの持つ特徴として、ウエストラインが高く「太っちょ」と言えるほどの胴体全体の太さが特徴だが、それが「カッコいいー」とする人たちが増えているのだ。一般的な常識論としては、「カッコいいー」姿は理論的にも「性能が高い」姿と一致すると言われてきた。
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例えば、ジェット戦闘機の「後退角」の鋭い翼は、音速付近の衝撃波の発生を遅らせ、抵抗を減らす効果がある。同じくジェット戦闘機の胴体が、全長の翼の取り付け付近で女性のプロポーションのように「くびれ」ているのは、「断面積法則」に従っており、これも超音速で抵抗を減らす効果が大きかった。
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また、レーシングカーの「くさび型」のプロポーションは、ダウンフォースを生んで、浮き上がらないようにするのに効果的だ。もちろん「ワイドロー」の姿そのものが、安定と空気抵抗を減らし、スリップを防いで速さを生んでいる。
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しかし、「SUV」の姿は???
「太っちょ」の姿で、レーシングカーやセダンに比べて空気抵抗が増えて燃費は悪くなるし、重心が高くなって車が速く走るには安定性がなく、逆効果ばかりだ。これが「カッコいいー」姿と認識されることは、もしかした「異例なこと」と理解すべきなのかもしれない。私自身、初めは違和感があったが、現在は「カッコいいー」姿と感じてしまっている。これはどうしたことなのであろう??
SUVという新たな文化
自動車の持つ機能の中で、「人を運ぶ・荷物を運ぶ」機能がある。「実用性」から考えると、スズキ・ジムニーとか、ミニバン各車となる。スポーツカーは実用的には必要はない。
引用:トヨタ公式サイト
日本の交通環境では100km/h巡行までとなっていて、空気抵抗が燃費にマイナスの効果を表す限界のスピードまでとなっていたり、偶然に実用性だけの車が、望まれる環境にあった。欧州のように200km/h巡行が当たり前の環境ではない。
この背景があって、日本では「ミニバンブーム」がやってきた。その環境で育った若者が免許を取り、幼いころから慣れ親しんだ「箱」=車の環境と感じていることが考えられる。それは、運転席の着座位置が高いことが喜ばれるということからもわかる。そのため、ハンドルについてもトラックのように垂直の方向に立ち、ハンドルを水平の方向に操作する環境が好まれるという。
引用:BMW-USA(BMW・X2のコックピット)
クルマ本来の機能としては 「〇」or「✖」?
このように、SUVは、スポーツカー、レーシングカートなどとは逆行しており、操作しやすさの基準も変わってきているようだ。「ワイドロー」の基準を追いかけてきたメーカーは、どの様に設計基準を変更してきているのだろうか?
↓↓↓こちらは、かつてのBMW・850i。低いですね~。
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↓↓↓こちらは、現在の850i。最近のノーズは尖っていません。
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安全性にも影響するほど重心が高くなっては危険であるし、外観のプロポーションはともかく、重心は低いほうが操縦性にとって有益であることは、物理的に変わらない。
さて、前置きが長くなったが、これらの技術とスタイルの矛盾を含んだBMW・X2の対処の仕方を見ていこう。
BMW・X2、クーペルーフ
BMW・X2のように、ウエストラインが高いのにクーペルーフというのは、物理的には矛盾している。
そもそも、クーペスタイルは居住性を犠牲にして、走行性能を求めることで出来てきたスタイルだ。だから、せっかくウエストラインを上げて「太っちょ」にして居住性を良くしているはずのSUVなのに、それをクーペルーフにして頭上クリアランスを犠牲にしている。
引用:BMW-USA(BMW・X2の後部座席)
空気抵抗を少なくして燃費をよくするなら、「全面投影面積」を減らさねばならない。クーペスタイルは、もともとは、その「全面投影面積」の減少を狙い、車体後部の整流を行って、抵抗を減らすのが目的だ。
引用:BMW-USA
BMW・X2は、これら物理的条件を無視して、現代の「カッコいいー」を求めた姿なのだ。自動車が人々の生活の中に入り込み、すでに特殊なものとしての認識ではなく、「アクセサリー」にも迫る日常のものとなったことを表しているのであろう。男性でもカラーで選ぶ人が多くなっている現状は、それを表している。性能・機能が最優先ではなくなったと言うことだ。
BMW・X2、直3エンジン
直列3気筒エンジン形式について考えてみると、日本のスズキが実用化している。
最近排気量の大きいエンジンでも3気筒が増えている理由とは?https://t.co/ytP2ThdyyD
— 毎日新聞 (@mainichi) 2018年9月22日
BMW・X2のパワートレーンでは、1.5Lと2.0Lが用意されているが、1.5Lエンジンについて3気筒としているようだ。
X2 sDrive18i | X2 xDrive20i | |
---|---|---|
エンジン種類 | 直列3気筒 | 直列4気筒 |
排気量 | 1.5L | 2.0L |
最高出力 | 103[140]/4,600 | 141[192]/5,000 |
最大トルク | 220/1,480~4,200 | 280/1,350~4,600 |
トランスミッション | 7速DCT | 8速AT |
駆動方式 | FF | 4WD |
使用燃料 | ハイオク | ハイオク |
※1.5L、2.0Lモデル共に、「Mスポーツ X」タイプが用意されている。価格は、436万円~515万円。
通常、エンジン設計で、小排気量・4サイクルエンジンで気筒数を決定するとき、避けたいのが奇数気筒だ。4サイクルエンジンは4回転で1回の爆発をする。そうすると4気筒が順番に1気筒ずつ爆発するので計算が合うことになる。気筒数が増えると360°の角度を配分することになり、その角度いかんでは振動が激しくなることになる。3気筒は中途半端なのだ。
だから、1.5Lエンジンでも4気筒を選ぶことが大半だ。1.0L以下でもほとんどは4気筒だ。3気筒にすることは、(推察だが)生産性の問題であろう。モジュール設計すると3気筒は6気筒の1/2で、生産工程を考えると有益になることが考えられる。心配になるエンジンの振動は、必ずしも気筒数だけで決まるわけでもなく、部品精度やエンジンマウントの設計にもよるので、そのあたり、加工精度などBMWは自信があるのであろう。
BMW・X2、FF・横置き
BMWは、伝統的に、エンジンの「FR(フロントエンジン・リアドライブ)、縦置き」を守ってきた。しかし、BMW・X2はその真逆、「FF(フロントエンジンフロントドライブ)、横置き」のクルマだ。
FFのデメリット
FF(フロントエンジンフロントドライブ)というのは、一般的に「居室」を広く取るためのレイアウトとして考えられてきたものだ。しかし、ハンドリング機構がある前輪を駆動するには、メカニズムが複雑になるのと、最小回転半径が大きくなるなどの制約(デメリット)があった。それが技術的に克服出来てきたことにより可能となったレイアウトだ。
また、FFにすると、加速時に車重が後輪に偏るので、前輪は浮いてしまい、タイヤが空転することが起きやすい。特に、高性能車ではエンジントルクが強く、思うように加速できないことが起きる。
日産・リーフはEVで、FFだ。信号停止から、全力で加速するとスポーツカーよりも速い加速力があるので有名だ。しかし、そうすると前輪は空転し、方向性が定まらなくなってアクセルをはなしてしまうしかない。一方、マツダ・CX-5などでは、スキッドコントロールが効いて、制御されているのが分かる。
横置きのデメリット
また、BMW・X2はエンジンを横置きにしており、「ロングノーズ・ショートデッキ」のプロポーションは崩れ、ショートノーズで居室部分が長いプロポーションとなった。BMWのデザイン上では思い切った改革だ。
これで居住性は良くなっていることだろう。しかし、クーペルーフはそれに矛盾してしまう。ミニバンで車高が高いのは、幼児やお年寄りなど、乗り降りが楽になることや、世話をする人がやりやすいメリットが大きい。それと同じ効果を狙うのであれば、クーペルーフはいただけない。
しかしもはや、SUVがそのジャンルを確立した証ともとれる。つまり、それは機能よりもスタイリングから考えていることが分かるからだ。
BMW・X2のサスペンションセッティング
BMW・X2のサスペンションは、最近のBMWレベルと比較すると、かなり固くセッティングしているようだ。
引用:BMW-USA
このところ「Mシリーズ」でも、「乗り心地が良さ」などを重視して、街乗りの細かい衝撃を吸収するバネに、大きなストロークを吸収するダンパーの組み合わせが主流となってきていた。
しかし、X2はそうではなく、「若者向き」なのだろうか? 以前のように細かい振動は感じるが、高速になると落ち着いてくるセッティングをしてきているようだ。また、室内の音がうるさいのは「手抜き」と言えるもので、価格が安いクルマはやむを得ない。
BMW・X2は、高級車の静粛性、乗り心地を求めるのではなく、「若者の」アクティブな心情に狙いを持ってきているのかもしれない。
ハッチバックドアの開き具合
クーペルーフはどうしても開口部は取りにくくなる。X2もX3などと比べると、全高の差、ルーフラインの処理で不利になっているようだ。
引用:BMW-USA
さらに、スバル・フォレスターと比較してみると、横にどれだけ開かれているかと言えば、フォレスターのそれは、テールランプが損傷するのではないかと心配になるほど開かれている。さすがに日本車は、「使い勝手」優先と言ったところだ。
しかし、BMW・X2も、荷物スペースの作りなど工夫がみられ、世界の車が日本車をベンチマークとして、学んでいることが感じられる。
SUVが単にスタイリッシュなクルマとならず、その名の通り、走る性能も備えた使い勝手の良い実用車に育っていくことを願っている。「太っちょ」が「カッコいいー」と思うようになってしまって?、ゴルフ場通いで山道の多い日本では、「ゴルフに行くときにとても便利な車」と思い始めている「お爺さんの願い」だ(^^;。
BMW・X2に乗るなら、4WD・2.0L直4エンジンがおすすめ!
BMWらしい走りを望むなら2.0L4WD「xDrive」を選ぶとよいだろう。
FFでコーナー立ち上がりなどでも内輪にブレーキをかけてFFのクセである加速時にアンダーが出やすい性格を打ち消しているが、やはりオフロード性能を確保する意味もあり、4WDをお勧めする。
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オンロード性能もしかり、オフロード性能でも「お爺さんが目をむく性能」を見せてくれるだろう。もちろん、BMW・750ほどのことはないであろうが、BMWの「xDrive」コントロールの基本は見せてくれるだろう。
FFでも「タックイン」に慣れてくると、「操縦性がクイックで良い」などの感想が出るようになる。捨てたものではないが、FRのようにパワースライドは使えないので、ドリフト走行は難しくなる。特に、オンロードではスピンターンを使うと遅くなる。こういう時、FRのパワースライドが欲しくなるのだ。でも、4WDでタイヤはグリップをしっかりさせて走るほうが速い。
「xDrive20i MスポーツX」直4/2.0Lガソリンターボ(192ps)をお勧めする。
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