トヨタ・日産の経営比較【グローバル発注・系列それぞれのメリットデメリット】

トヨタ

この記事は、集客の達人メールマガジンに過去(2001.1.12)掲載された記事です。当時は、立ち行かなくなった日産にカルロス・ゴーンというカリスマが経営者として就き、世間では大変な話題となりました。その時、筆者は一介の経営者として、冷静にトヨタと日産の経営方針の差を見つめていました。



「日産のグローバル発注」対「トヨタの系列」メリットデメリット

<日産>

グローバル発注とは、インターネットを使用して世界中から部品の納入を募り、もっとも安いものを仕入れる方法である。
日産は、この方向性を、今後強く出していくという。欧米の企業の方向性で、カルロス・ゴーンがそれを採用するのは当然のこと。しかしそこで、日産の系列の数が半減したのはご存じの通り。

<トヨタ>

一方、トヨタは、自社内工場でタイヤも生産させるという(内製)。製法特許を持つタイヤメーカーが、トヨタの生産ライン内で、ラインの必要とする数だけ短期間に作るのである。タイヤ製造において、コスト削減などは30~40%といわれる。このようにトヨタは、製法の改善により、コストを下げていくのである。(トヨタ生産方式)

そして、ここで着眼したい点は、系列を抱えていくことのメリットである。

①グローバル発注では、製法については部品メーカー任せになり、何より部品の仕様については、メーカーの既成に近いものとなってしまう。(商品力や品質の低下を招く恐れも)

②グローバル発注では、物流において、船便の使用だとすると「ジャストインタイム」は困難であり、コストからみても管理上の不利がある。(一度に多く仕入れるため在庫の倉庫保管料、人件費や資材費を含む倉庫作業費が増える)

つまり、グローバル発注では上記のようなデメリットがある。

一方、トヨタのように系列と呼ばれる下請け会社を使用した場合、納期の短縮など、「ジャストインタイム」に向けての改善に圧倒的にメリットがある。それは、モデルチェンジなど設計変更時にも圧倒的にメリットがあり、設計には会社の意図を反映しやすいということになる。(商品力)また、部品に不良がでたときのことを考えると、問題にならないほど、系列は有利である。

よって、グローバル発注は、全体的品質については不安要素が多すぎると考えるのである。

もちろん、グローバル発注に向いた部品と向かない部品が、意外に明確に存在しているはずで、熟慮する必要がある。

上記は当時のメルマガの内容。そして、現在どうであるか?トヨタ・日産両社の売上高や営業利益の比較を見れば、わかってきます。

TNGA、造り方で勝ってきたトヨタの伝統

以下参考記事のように、トヨタはTNGAという大改革も続行中です。筆者がいつも、『自動車産業は「造り方」がビジネスモデル』と言っているようにトヨタ生産方式が根付いているからこそ、できることなのかもしれません。

 

日本の産業を残すため、「チームトヨタ」を結成

・マツダ: 資本提携して、米国生産やEVで提携

・スバル: 持分法適用会社に。

・スズキ: 電動車やインド市場で提携

・タイハツ+日野自動車: 子会社

BMWとは、燃料電池車やスポーツカーで提携

BMWにはまだまだ学ぶべきところがある。それを具現化した第1号は、新型スープラ! BMWは、モータースポーツの技術を市販車に積極的に活用している。モータースポーツの場は、本田宗一郎氏も言っていた通り「走る実験室」だからだ。先にレース仕様のクルマを造り、それを市販車ベースに落としていくことが研究開発費の有効活用にもなる。

※現在、トヨタは創業家が存続していますが、実はBMWも創業家は健在。今になって、世界では「同族経営」が見直されています。それはなぜか??世界が注目!意外に多い!成功している「同族経営」、サントリーもトヨタも。「三方よし」で、消費が伸びない社会を救えるか??

 

トヨタ対日産!決着は如何に

トヨタの日本式系列を配した方式が、「旧態からでられなかったトヨタ」となるのか? 欧米世界標準から比較して、全く「新方式の覇者」となるのか?
それは、かつての「石油ショック」以前と以後では、世界の価値観が激変したように、企業の置かれている価値観が、如何に変化するかによるだろう。

日産自動車は、英語を社内標準語に定めたそうである。これは、別の意味では、日本文化の世界標準に同化する動きとして、あまりおもしろいものではない。
しかし、経済的に自給自足の国はあり得ない状況であり、現在に至るも、アメリカや英国などの英語圏の世界的支配が強大である以上、小国日本の文化は、日本人が世界にでようとすればするほど、消滅していく運命にあるのは否定できない。
昨今のインターネットを使用した社会の動きを見ても、この世界の大きな大きな流れの中で、「純日本的トヨタ方式」を応援したくなる気持ちが、私にはある。
いずれにしても、設計変更を繰り返していく中で、市場の棲み分けがはっきりしてくるように思う。

上記は2001年当時のメルマガの記事であります。

さて2020年現在、トヨタは今後「サービス業になる」と言っています。「100年に1度の大変革時代」と叫ばれている今、大方針を明確に打ち出しています。これをなせる業はどこからきているのでしょう。

<参考にしてほしい過去記事>現在、トヨタは国内では爆発的な人気のカローラが復活しています。コンパクトSUVの新型ライズも人気で、それに追随しています。一方、日産リーフは安定して売れてはいます。しかし日産は電気自動車というトレンドキーワードを追うばかりでパッとしません。つまり、企業の「大方針」、商品の「コンセプト」がどうしても劣ってしまうのです。それが昔の記事からもわかります。➡【トヨタ・日産、比較検証】統一されたコンセプトは、いずれ市場が価値を決める!~世界が惚れたセルシオv販売不振に終わったインフィニティQ45~

 

↓↓↓さらに「Woven City」と名付けたコネクテッドシティー構想を発表しました。次世代のキーワードに挙げる「CASE」や「MaaS」の最新技術の実証をしようという取り組み。生き残るために、何かを変えて始めなければ!

TNGAはまだしも「Woven City」は夢物語ではないか、と勘繰る人もいるかもしれません。しかし、トヨタのように、経営は「ビジネスモデルに沿って」全方位で構えていくのが良いのです。その逆の「取捨選択」とよく言われますが、それをしすぎて絞り込んでしまうと、情勢が変わったときにどうにもならなくなってしまうからです。(ホンダも部品製造をサプライヤー任せにしてしまったことで求心力を失っています。日産も電池を内製することをあきらめてしまいました。)

これは、店舗経営においても同じようなところがあります。お得意様だけに絞ってしまうと(その方が楽ですが)、不特定多数の多くのお客様になるべき人たちを切り捨てることになるのです。もちろん今ある市場や地元のお客様を大事にしつつ、いつも新しい市場に手をかけたり、創造していくことが必要なのです。

【2020年は期待できる!ホンダジェットがF1マシンを救った!】それでも瀕死状態、ホンダのワイガヤ文化を復活させないと!