R32スカイラインGT-Rと、R35日産GT-Rとの違いは?

スカイライン_R32_GT-R_001 日産とGT-R物語

なぜR32スカイラインGT-R(2022現在)は、日本国内でも海外でも高い人気なのでしょう。現行モデルのR35日産GT-Rとの違いはなんでしょうか?ちょっと歴史から紐解いておきましょう。



1:スカイラインGT-R(R32)と日産GT-R(R35)の違い

1989年8月に発売されたスカイラインGT-R(R32)は、量産車の部品を利用してコストを下げました

だから、そのおかげで、高性能であるにもかかわらず、破格の価格で市場に送り出すことができ、私たちが『買えるかもしれないスーパーカー』になったのが「R32スカイラインGT-R」でした。

R32スカイラインGT-R、当時の新車価格=約430万円~529万円

 

出典:R35日産GT-R 日産公式サイトより

一方、2007年10月発売のR35日産GT-Rは、そのネーミングから「スカイライン」の冠名がなくなっただけではありません。量産車部品を使用したR32とは、根本的に造りが違っています

R35・GT-R専用設計の専用部品を増やし、特別の1台に仕上げています。それでも、その高性能に対して破格の値段を維持し続ける「日産GT-R」がR35の姿です。

また、日産自動車として「GT-R」に託した、販売戦略上のイメージリーダーとしての役割も違っています。

R35日産GT-R、新車価格(2007年)=約777万円~830万円

なぜR32スカイラインGT-R(2022現在)は、日本国内でも海外でも高い人気なのか?は、どちらも高性能なのに破格の値段であることが人気の理由の1つなのでしょう。

今回は、興味深いR32とR35の違いについて、歴代スカイライン、GT-Rから見ていきましょう。

 

そもそもスカイラインがGT-Rの生みの親

今では、スカイラインがGT-Rの生みの親だってことを知らない若い世代も多くなったのではないかな? かつてはスカイラインGT-Rだったのです。

プリンス・スカイラインからスカイラインGT

GT-Rの物語は、正確には2代目プリンス・スカイラインに始まると言えます。レースに出場するベースカーとして「プリンス・スカイライン2000GT」が登場します。

一般の乗用車として作られていた「プリンス・スカイライン1500」に「プリンス・グロリア」の直列6気筒2000ccエンジンを載せました。ボンネットを延長して積み込んだのが、スカイラインGTの始まりです。

1963年5月開催、第1回日本グランプリ出場のためでした。

スカイライン 2000GT-R(PGC10型)

1969年2月発売の日産・スカイライン 2000GT-R(PGC10型)は、車体は市販乗用車スカイライン2000GT(GC10型)を使いました。エンジンはプロトタイプ・レーシングカーである日産・R380のエンジン・「GR8」をディチューンして「S20」として搭載しています。

S20エンジンは、オイルをGR8のドライサンプをやめ、ガソリン供給は、現代のように燃料噴射ではなく、3基のソレックス40PHHキャブとして、160ps/7000rpm、18.0kgm/5600rpmとしています。

スカイライン 2000GT-Rのエンジンは、ディチューンしたとはいえ、かなり気難しいエンジンでした。

空気の薄い富士山五合目の駐車場で、エンジンがかからなくなったPGC10スカイラインGT-Rを見かけたときもありました。

スカイラインハードトップGT-R(KPGC10型)

続いて、1970年10月ハードトップGT-R(KPGC10型)が登場します。

通称ハコスカですね。

ホイールベースを、後席の居住性を犠牲にしてでも70mm短くして、運動性を向上させました。「レースに勝つため」に、実用性を犠牲にしたのです。

スカイライン2000GT-R(KPGC110型)

1973年1月、ベース車のスカイラインが「ケンとメリーのスカイライン」(ケンメリ)になって、スカイラインGT-R(KPGC110型)が加えられます。

しかし、3カ月間(販売台数195台)で打ち切られます。この背景には、重くなったボディでマツダ・ロータリー車にレースで勝つことが難しいと考えられたことがあります。

そして、「GT-R沈黙の時」がやってきます。

2:「沈黙の時】のスカイラインGT-R

1981年8月、6代目R30スカイラインが発売になりました。

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DOHC直列4気筒FJ20ETターボエンジンに、インタークラーを付けて205ps/25.0kgmにした、2000ターボインタークーラーRSが登場しましたが、「GT-R」の名は名乗りませんでした

そして1985年、7代目R31スカイラインGTS-Rも、6気筒RB20DET-Rエンジンでありながら、”実力不足”として「GT-R」を名乗りませんでした

全日本ツーリングカー選手権(JTC)でドライバーズタイトルを獲得していながら、GT-Rを名乗らなかったのは、現在でも人気を誇る「R32スカイラインGT-R」の開発が進んでいたからでしょう。

GT-Rには、「圧倒的な性能」を持つことを日産自ら求めたのでした。

3:R32スカイラインGT-R、復活!

そして1989年8月、16年ぶりにR32スカイラインGT-Rが登場します。

↓↓↓我が家にある当時のR32スカイラインGT-Rのカタログからです。スキャナー取り込みではないので一部光ってます💦

 

直列6気筒DOHC4バルブ(RB26DETT)エンジンは2568cc、セラミック・ツインターボで280ps/36.0kgmのスペックでしたが、これは自主規制で抑えていたので、実馬力は310psぐらいであったようです。レース仕様では、600psを想定していました。

R32スカイラインGT-Rの特徴・アテーサE-TS

R32スカイラインGT-Rの特徴は、駆動方式をフルタイム4WDとした「アテーサE-TSであったことです。

これにはプロのレーサー達は驚いたようで、「ラリーであるまいしフルタイム4WDは必要ないでしょ」と言ったのです。

でも設計者の狙いは、アテーサE-TS(4WD)がなければ「トルクが大きなエンジンを積むため、幅広のタイヤを装着しても車重が重いのでスリップする」と見たのです。

その見込みは当たっていました。

R32スカイラインGT-RのアテーサE-TSは、コーナーの入り口でFRの特性により後輪を滑らせると、前輪に駆動力が伝わり、スリップせずに前進するので、コーナーの立ち上がりが速いのです。

運転感覚はFRなのに、立ち上がりが速いため、コーナリングスピードが上がりタイムが伸びます。

この初期の「アテーサE-TS」は操作が難しく、乗りこなすことができるのは、やはりプロのレーサーの腕前にあったようです。現在のR35では、夢のようにスムーズに制御されるようになっているようです。

R32スカイラインはボディーを小型化して、ハンドリングを向上させる強靭なプラットフォームを採用しています。レースのベース車両となるべき設計がしてあるのです。

こうして「他を圧倒する性能」を与え、「スカイラインGT-R」の復活を告げたのでした。

↓↓↓R32スカイラインGT-RのアテーサE-TSについて、開発物語を知りたい方は、こちらを!


曲がる4WDを実現したR32型スカイラインGT-R
横Gセンサーの考案で「アテーサE-TS」実用化への道が開く世界一を目指した日産BNR32型スカイラインGT-Rの走りを支えるため開発された最新デバイスが、電子制御トルクスプリット4WD「アテーサE-TS」。今回は、アテー…【引用:オートメッセウェブ】
 

 

4:スカイラインとGT-Rの決別~スカイラインの名がなくなり日産GT-R登場

このように、スカイラインGT-Rは乗用車であるスカイラインの姉妹車でした。

GT-Rはスカイラインの量産部品を使い、安くて高性能な車に仕上げてあったのです。そのため、サーキットでは弱点もありました。

ブレーキは、サーキットで全力走行すると、すぐに「フェード現象」を起こしてしまいます。もちろん、ブレーキパッドを取り換えれば済むのですが、「レース出場車のベースカー」の位置づけでした。

しかし一方、公道を走るファミリーセダンである「スカイラインGT」のイメージリーダーとして、販売に貢献してきたのがGT-Rでした。

そして現在は、「スカイライン」ブランドは継続していますが、「GT」のみの販売です。ファミリーセダンは消滅しているのです。これは、レースカーのような高性能モデルが、イメージリーダーとはならなくなった日本市場の現実がそうしたのです。

R32のあと、スカイラインGT-RはR33(1995年)、R34(1998年)と続きますが、ついに2007年「R35日産・GT-R(R35)」の登場となります。

「スカイライン」の名称はなくなり、GT-R専用設計となりました。

結論が遅くなりましたが…、
これが、R32スカイラインGT-Rと、R35日産GT-Rの大きな違いでしょうね。

そう…、「スカイライン」と「GT-R」の決別のときでした。

しかし、今でも長年の「スカイライン」ファンの中には「400R」を買い求める人が多いようで、「スカイラインGT-R」の夢を追いかけているのでしょう。

 

6:R35日産GT-Rはお安い!世界第一級のスーパーカーでも

こうしてスカイラインと決別し、専用設計のプラットフォーム、エンジン、レース仕様のミッション、ブレーキを与えられ、500psを超えるスーパーカーになったR35日産GT-Rです。

そんな高性能車であるGT-Rは、前述の通り、1千万円を切る価格で2007年に発売されました。これは、世界のレベルと比較すると破格のセールでした。

R35日産GT-R、新車価格=約777万円~830万円

その後、日産GT-Rはマイナーチェンジを繰り返し、現在の価格は、標準車(GT-R Pure edition)でも1千万円を超え、ニスモ仕様では2千万円を超えています。それでも、世界レベルで同じ600psの車を比較すると、大変お安い価格なのです。

※価格ドットコム・「GT-R」のページ

 

知恵の輪サイトのまとめ

「スカイライン」と別の道を歩き、日産のシンボルカーとなった日産GT-Rですが、これが成功であったのかと言えば、「世界で成功、日本で失敗」と見るのが正解ではないでしょうか?

それは、日産GT-Rとして世界で売れているのですが、やはり特殊車両であり販売台数に限りがあるからです。

GT-Rは、すべての日産車両のイメージリーダーとしての役割を果たしているはずですが、どの程度、全体の販売に貢献しているのかは分かりません。

そして、かつては日産車の販売をけん引してきたスカイラインですが、日本国内ではスカイラインは消えかけています。そう、『いつかはスカイライン』だったんですけどね。

そして、初代GT-Rの生みの親である桜井真一郎氏の名が残るなど、設計者の名でかたられる唯一の日本車です。

R35日産GT-Rは、専用設計の3.8L、V6気筒DOHCツインターボの、VR38DETTエンジンを装備しています。これに6速DCTを組み合わせトランスアクスルとしています。

エンジンはフロントミッドシップと言ってよい配置で、ミッションはリアにあるので、重量配分は理想に近いです。

これに、電子制御の進歩ですっかり滑らかな作動となった最新型の「アテーサE-TS」の4WDにより、サスペンションセッティングも低速で柔らかく高速で安定した、世界で最新のセッティングとなり、実用車となっています。

内装も豪華装備で、「スカイライン」と決別した「R35日産GT-R」で、まさしく世界のスーパーカーとなりました。

R32スカイラインGT-Rと違う道を歩んでいる、日産GT-Rです。

 

※GT-Rについては、当サイトで特集しています。
 お時間のある時にご覧ください!

【日産GT-R物語(1)】プリンス・スカイライン2000GT[1]

【日産GT-R物語(3)】愛のスカイライン[1]

【日産GT-R物語(6)】羊の皮をかぶった狼[2]

【日産GT-R物語(8)】初代スカイラインGT-R[2]

【日産GT-R物語(10)】ターボチャージャー

【日産GT-R物語(13)】なぜ?4WDがひつようなのか[1]

【日産GT-R物語(22)】サスペンション・セッティング[1]

【日産GT-Rとグランドセイコーのコラボ時計!】クラフトマンシップを …