「最近、ガソリンスタンドの価格表示がじわじわと上がっている気がする——」そう感じている方は少なくないはずです。
2026年に入ってレギュラーガソリンは平均で155円ほどでしたが、3月中旬には190円を超えました。4月現在は、補助金の効果もあってか167円ほどです。(地域によって差があります)
その背景にあるのが、中東の小さな海峡で起きている出来事です。「ホルムズ海峡」という名前を聞いたことがあるでしょうか。幅わずか33キロメートルのこの海峡を、世界で消費される石油の約4分の1が通過しています。
このホルムズ海峡が封鎖されると、日本のガソリン価格はどこまで上がるのか? 本記事では、その仕組みと今後の見通しをわかりやすく解説します。
ホルムズ海峡の封鎖が、世界経済に及ぼす影響力をデータで検証
ホルムズ海峡の経済的影響力を3つの図表でまとめました。

ホルムズ海峡が世界のインフラを支える
ホルムズ海峡とは、ペルシャ湾とオマーン湾をつなぐ細長い水路で、最も狭い部分の幅はわずか約33キロメートル。北側にイラン、南側にオマーンが面しており、東京から横浜までの距離とほぼ同じです。
その海峡を、世界で消費される石油の約4分の1が通過しているのです。(上図の1日の原油通過量と世界石油輸出シェアを参照)
この海峡の最大の特徴は、その「代替のなさ」にあります。サウジアラビア、イラク、クウェート、カタールといった中東の主要産油国から石油を輸出するには、ほぼこの海峡を通るしかありません。(上図の主要産油国の依存度と通過エネルギーの内訳を参照)
世界で海上輸送される石油の約4分の1、そしてアジア向けに限れば8割以上がここを通過しています。

上図の主要輸入地域の原油輸入量に占めるホルムズ依存比率を見てみれば、アジア向け、ことに日本がダントツで依存していることがわかるよね。90%だよ!
日本との関係はさらに深刻 →ガソリン価格高騰だけじゃなく…?
日本が輸入する原油の約9割以上は中東産であり、そのほぼすべてがホルムズ海峡を経由して運ばれてきます。

つまり、この海峡が封鎖されたら、日本のエネルギー供給は直接的かつ深刻な打撃を受けることになるんだ!
もちろん、ガソリン価格も上がり、供給できないからガソリンを使えなくなるということも考えられるんだ…。
よく「チョークポイント」(咽喉部)という言葉が使われます。瓶の首のように細くなった部分を押さえれば、全体の流れを止められる、息の根を止められる——ホルムズ海峡はまさにそういう場所です。世界のエネルギー地図の中で、これほど小さくてこれほど重要な場所は他にほとんどありません。
ホルムズ封鎖がガソリン価格に影響する仕組み|油田からガソリンスタンドまで
ホルムズ海峡が日本にとってどんなに重要かが分かったところで、
実際にガソリンスタンドの価格がどのように決まっていくのか、どんな仕組みになっているのかをまとめてみます。
ガソリンスタンドで表示される価格は、実は多くの工程を経て決定されます。原油が採掘されてから私たちが給油するまでの流れを、順に追ってみましょう。
まず中東の油田で採掘された原油は、タンカーに積み込まれてホルムズ海峡を通過し、日本へ向かいます。中東から日本までの航行日数はおよそ20日。その後、国内の製油所でガソリンや軽油などに精製され、タンクローリーでガソリンスタンドへと運ばれます。

ここで重要なのは、原油価格の変動がガソリン価格に反映されるまでに、数週間から1か月程度のタイムラグがあることです。
つまり、ホルムズ海峡で何かが起きても、私たちがその影響を価格として実感するのは少し先の話になります。逆に言えば、今まさに値上がりを感じているとすれば、それは数週間前の出来事が影響している可能性があります。
また、ガソリン価格は原油価格だけで決まるわけではありません。為替レート(円安になると輸入コストが上がる)、精製・輸送コスト、そしてガソリン税などの税金も価格を構成する重要な要素です。日本のガソリン価格にはリッターあたり約50円以上の税金が含まれており、この部分は原油価格に左右されません。
それでも、原油価格の影響力は非常に大きく、原油が急騰すれば最終的にはガソリン価格に跳ね返ってきます。ホルムズ海峡の封鎖は原油の供給量そのものを絞るため、価格への影響は通常の相場変動とは比べものにならないほど大きくなる可能性があります。
ガソリン価格はどこまで上がるのか?|予測と過去の事例
では実際に、ホルムズ海峡が封鎖された場合、ガソリン価格はどこまで上がるのでしょうか。
断言はできませんが、いくつかの予測データと過去の事例を参考に考えてみます。
原油価格については、格付け機関フィッチ・レーティングスが「封鎖が6か月続いた場合、2026年の平均価格は1バレルあたり120ドル、急騰時には130〜170ドルに達する可能性がある」と試算しています。封鎖前の原油価格が60ドル台だったことを踏まえると、最悪のシナリオでは2〜2.5倍以上に跳ね上がる計算です。
過去を振り返ると、1973年の第一次石油危機では原油価格が約4倍に高騰し、日本では「トイレットペーパーの買い占め」に象徴されるパニックが起きました。ガソリン価格も急騰し、経済全体に深刻な打撃を与えました。
当時と現在では備蓄体制や代替エネルギーの普及度が異なりますが、構造的な中東依存は今も変わっていません。
楽観的なシナリオとしては、封鎖が短期間で終わる、あるいは米国などが外交的解決に動くことで市場の混乱が最小限に抑えられるケースが考えられます。その場合、原油価格の上昇は一時的なものにとどまり、ガソリン価格への影響も限定的になるでしょう。
封鎖が長引けば長引くほど影響は深刻になります。
日本政府は国家石油備蓄として約150日分の原油を確保していますが、それも無限ではありません。封鎖が数か月単位に及べば、備蓄の取り崩しが始まり、国民生活への影響が本格化すると見られています。
私たちにできることは何か?ーホルムズ海峡を通過しないエネルギー供給源を見つけられる可能性
では、私たちにできることは何か?
真っ先に思い浮かぶのは節約術、そして代替手段(電気自動車・公共交通など)です。
そこで、知恵の輪サイトでは独自に「日本が1~2年間にホルムズ海峡を通過しないエネルギー供給源を見つけられる可能性」について、考えてみました。AIの力を借りました。以下の図です。

図表から読み取れる核心的な結論を3点に絞ってみます。
1年〜2年では「完全脱却」は現実的に不可能で、最大努力でも原油依存は 87% → 62% 程度の削減が限界です。(上図現状と目標値より)
理由は3つの構造的壁(製油所の硬質油設計・長期契約の拘束・代替量の物理的上限)に集約されます。
最も即効性が高い施策は、原子力再稼働の加速です。
それは既存インフラをそのまま使えるためで、1基稼働するたびに中東産LNG・石油の需要そのものを削れます。
ただ、規制審査と地元合意が唯一のボトルネックで、政治意思次第で1年以内に成果が出始めます。
戦略の優先順位は現実的には次の順となります。
1.需要削減(省エネ・核再稼働) — 供給側ではなく需要側を縮小する最短経路。つまり節約。
2.豪州・米国LNG増量 — 既存の受入インフラと契約関係を活かせる
3.米国・アフリカ原油への一部切り替え — 製油所改修が先決
4.ロシアESPO原油 — 量的には代替可能だが、G7制裁との矛盾が政治的に解決困難
4のロシアESPOはホルムズを通らない数少ない大量原油ルートですが、現在の国際制裁環境下では選択肢として機能しないと考えるのが現実的です。
やはり、「1.需要削減」のうち、すぐにでも実行できるのが、私たち生活者が節約して備蓄を温存することです。
それが日本の民衆の良いところでもありますが、同じように政府が精力的に代替え案を実現させていけるのかをチェックしていかねばなりません。
「犠牲になるのは民だけ」ではいけないのです。