「スカイライン2000GT」、通称“スカG”は、現在の日産GT-Rに直結するレース仕様スカイラインの始祖です。今回はその歴史を辿り、販売戦略の奥で誕生したレース仕様こそが、後に“神話”となる系譜をどう形づくったかを詳しく見ていきましょう。

スカイライン2000GTの登場と“スカG”伝説の誕生
1964年に登場した「プリンス・スカイライン2000GT(S54型)」は、「第2回日本グランプリ」に向けて急きょ開発されたホモロゲーションモデルです。もともと1,500cc直列4気筒設計だった車体に、グロリア由来の2,000cc直列6気筒G7型エンジンを強引に搭載し、ノーズを約200mm延長した、まさにロングノーズショートデッキを象徴する造りでした。

この2000GTには、「レース仕様」として3連ウェーバーキャブレターを装備した「2000GT-B」と、街乗り向けの「2000GT-A」が存在しました。B仕様は最高出力125PS(当時の公称値)、A仕様は105PSとされ、公称表示からもレース仕様の血統が見てとれます。
2000GT-Bは4速フロアミッションを備え、LSDをオプション設定。サーキットでも通用する本格的なレース仕様としては、当時の日本で右に出るものがなく、街乗りA仕様は、3段変速でしたが、より扱いやすい仕様として、両輪で人気を博しました。
ホモロゲーションとスカイラインGT‐Bの実態
ホモロゲーション条件は100台以上の市販車製造。2000GT-Bはそれを達成し、1964年3月に発表。市販モデルは翌年2月から“B仕様が標準”となり「スカイライン2000GT」としてリリースされました。
🚗 ホモロゲーションってなに?
▶ 一言でいうと…
「レースに出場するために、ある程度"市販車"として売らないといけない」ルールのこと。
つまり、ホモロゲーションは、
限られた条件の中でギリギリ攻めた「本気のマシン」を一般に売ることでルールーに適合させる技術と戦略
のことです。
ウェーバーキャブ3連装モデルは輸出仕様もあり、当時130万円前後だった価格には相応の価値がありました。赤バッジ・丸型テール・ディスクブレーキを特徴とし、「スカG伝説」はここから本格的に始まりました。

女の子が「スカGね~」と言えば「すてきね~、かっこい~」と言ってることと同じことでした。つまり、「カッコイイ!」の代名詞だったんだ。
“愛のスカイライン”と初代GT-R=ハコスカ誕生へ
1968年に3代目スカイライン(C10型)が登場し、販売戦略が重要視され始め、キャッチコピー「愛のスカイライン」として親しまれました。

CMのキャッチコピーの親しみやすさと、レースシーンでの壮絶な争う姿のギャップが、人々の心に刺さったんですよね。
翌1969年、ついに『日産スカイラインGT‑R(PGC10型/KPGC10型)』が発売され、正式にGT-Rは誕生します。
この初代GT-Rには、S20型DOHC 2,000cc直6エンジンが搭載されました。元はレース専用車「日産R380」のGR-8エンジンをベースとし、圧縮比を下げたり、ドライサンプからウェットサンプに戻すなどのディチューンを施して市販仕様に適応させたものです。
S20エンジンは公称160PSで、当時のライバルとなるトヨタ2000GT(約150PS)を上回る出力を誇り、GT‑Rはすぐにレースシーンで実績を重ねます。
💡この当時の出力表示は、補器類を除いた単体の出力表示で、現在の表示より5%~10%程度高く表示されていたといわれています。
S20エンジンとレース仕様の魂
S20エンジンは以下のような特徴を持ち、レース仕様スカイラインGT-Rの象徴ともいえます。
- DOHC/4バルブ×6気筒
- 3連ミクニキャブまたは、レース仕様のワークスカーでは機械式燃料噴射
- 高回転性能と160PSの市販仕様(レース仕様では200PS超)
- レース専用R380の血を引いた技術と信頼性
S20エンジンは、その後フェアレディZ432にも搭載され、「レース志向の日産エンジン」の代表格となりました。
また、エンジン単体の計測では160馬力でした。2000ccとのクルマとしては、当時市販されていたトヨタ2000GTの150馬力を凌駕して最高出力でした。
S20は、プリンスR380のレース用エンジンGR8のオイルサンプを「ドライサンプからウエットサンプ」にして、圧縮比を少し下げ、馬力を落として日常使用に耐えるものにしています。
このエンジンオイル・ドライサンプの技術は、旧中島飛行機、現在の富士重工の飛行機用「誉(疾風)や栄(ゼロ戦)」エンジンからヒントを得たものでした。その意味では、戦後が終わっていなかった時代でした。

ドライサンプとウェットサンプってなんですか?

エンジンのオイル潤滑方式で、2つの方式があるんだ。
◎市販車のほとんどはウェットサンプ方式 ➡エンジンの下にオイルパンを設けて、そこにエンジンオイルを溜めて潤滑する。知っている人は多いよね。
◎一方、ドライサンプはオイルを外部のタンクに分離して保管し、専用のポンプでエンジンに送る仕組み。ドライサンプはオイルの泡立ちを防ぎ、高速走行時や急な加減速でも安定した潤滑が可能で、サーキット走行や高性能車で採用される。また、オイルパンが浅くなるため、エンジンを低く配置でき、車両の重心を下げるメリットもある。
プリンスR380がドライサンプなのは、やはりレーシングカーだからだね。
GT-Rの名を継ぐ伝統──日産の競技マインド
プリンスから日産統合後、愛のスカイラインCMと共に、グリルやリアピラーに小変更を加えた「ニッサン・プリンス・スカイライン2000GT」が登場。その後「GT‑R」が登場していったのです。
はじめは4ドアセダンで登場して、後に2ドアハードトップのスタイルとしました。
同時に、レースでの旋回性能を考え、乗用車としての後席の乗りやすさを犠牲としてもホイールベースを短縮したのです。
1969年~1971年にかけて、初代GT‑Rは富士/鈴鹿などの国内レースで49連勝という驚異的な成績を収め、1972年に50勝目を達成。以後もGT-Rブランドは走りの象徴となり、現在のR35 GT-Rへと受け継がれています。
当初、圧倒的な速さを見せていたGT-Rでしたが、マツダが開発するロータリーエンジン勢に次第に追いつかれ、50勝目は辛くも成し遂げたといったところでした。
その後、モデルチェンジが施され、「ケンとメリーのスカイライン」となったときには、重量増でロータリー税に対してGT-Rは勝ち目がなくなり、いったんレースから手を引くこととなりました。