「結果にコミットする」というキャッチコピーで知られる、 健康産業・トレーニングジム・RIZAP(ライザップ)グループは、2019年3月期の業績予想を大幅に下方修正した。純損益を5月時点の159億円の黒字から11月時点として70億円の赤字に、営業損益を5月時点230億円の黒字から、11月時点33億円の赤字に、それぞれ大幅に下方修正した。
【ライザップ社長が赤字転落の要因を明かす】
「この1年2年は、本業に加えて成長のための手段としてM&A(合併・買収)を積極的に行ってまいりました。大きく社数を増やしましたが、見通しが甘く、大きく下方修正を出す結果となってしまいました」https://t.co/DdlcreloZG— BLOGOS編集部 (@ld_blogos) 2018年11月17日
RIZAP(ライザップ)といえば、タレントのビフォー・アフター肉体映像で、「結果にコミットする」というキャッチコピーCMで一躍名をはせた。 瀬戸健社長は、RIZAPグループを売上1000億円超の企業に育てた人物。24歳で起業して、この5年ほどの間、特にこの2年、M&Aで巨大グループへと成長させたが、14日業績予想を下方修正し赤字転落を発表した。
「反省を基に……」。赤字転落見通しと、積極的なM&Aによる拡大路線からの転換を表明した翌朝、朝礼を開いたRIZAP瀬戸健社長。株式市場からもストップ安に見舞われての再出発です。https://t.co/9e9uwrTpTv
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) 2018年11月15日
原因は「負ののれん」の魔力
RIZAPは、この2年間に急増したM&Aを上げた。現在では、連結子会社が80社以上で、業種業態も多岐にわたり、再建が間に合っていない状態だった。この手法の裏には、「負ののれん」を狙ったマネーゲームが隠されている。
負ののれん代は、企業を買収した際の、買収額と受け入れる時価による純資産との差額のうち、買収額(現金・株式)のほうが少なく、時価純資産を下回り、割安の価額で企業を買う場合の差額のこと。
引用:はてなキーワード
国際財務報告基準(IFRS)では、「評価と買収額の差額」が営業利益として計上できる。RIZAPの場合は「負ののれん」といって、M&Aでの買収額がその企業の「価値を下回る」と評価できる場合が多かったとみられる。そのためM&Aを行って「負ののれん」が営業利益として計上され、決算が順調であるように見えていた。
2019年3月期の営業利益の6割ぐらいが「負ののれん」によるものと見られる。これは、いわゆる「見通しの甘さ」によるものではなく、「マネーゲーム」による錬金術の世界で「暗闘する」経営陣による確信犯であると見える。
「負ののれん」の魔力に惑わされた経営陣がいるのだろう。
アコーディア・ゴルフと共通の「マネーゲーム」体質
かつて、ゴールドマンサックス(GS)が作ったゴルフ場運営会社アコーディア・ゴルフ(AG)で見られた手法は、買収で拡張して整備費などの経費を削減し、収益を回復させていた。RIZAPの手法は、それよりもさらに「マネーゲーム」体質と言るだろう。
AGはその後、敵対的買収や、旧村上ファンド(村上
しかし、この両企業の共通の迷いは、自社の「ビジネスモデル」を忘れていた、または無視していたことにある。80社ほどもある多岐にわたる経営再建を、現経営陣で軌道に乗せられるとは考えられない、経営陣の「経営技術に関する知識」が狭すぎる。
商売(ビジネスモデル)は、業種業態で千差万別で、またその時々に捉え方を変える必要が出る。
現在、トヨタ自動車は、単に「製造し売る」ビジネスモデルから、「サービス業のプラットフォーマー」にビジネスモデルを転換しようとしている。これは、ネット・AIなど技術の進歩による市場の変化に沿って転身しようとしているわけだが、長期の戦略的動きだ。
RIZAP、AGは、現在の自社のビジネスモデルさえも理解できず、数年の短期利益を求めてマネーゲームに「うつつを抜かしてしまった」と言える状態だ。
「マネーゲーム」と「商売」を行う技術は別物と考えよ!
このような短期の利益を求めれば、破綻は近い。
そのことを、「論理的には理解できない人材ではないはず」だが、なぜか株主や顧客などを「騙す」、あるいは「牛耳る」ことに「快感を求める」人種が少数だが社会には存在し、その人物に周囲が流されるのが人間の現実のようだ。
RAIZAPには、買収した企業の再建が出来る人材がいるとはとても思えない状況だ。実際の利益がどれほどになるのかは、これからの進捗状況を見ていかないと判明しないだろう。実態を捉えている経営陣がいるとも思えない。再建のプロが必要だ。
RAIZAP自身は、見込みのないグループ企業を切り捨てれば、本体の経営が順調であるので再建は容易いであろう。しかし、こんな錬金術ばかりの企業になってしまったら、日本経済は崩壊に向かうことは間違いあるまい。
マネーゲームと商売を行う技術は別物と考えることが必要で、マネーゲームに必要な金融知識は、ビジネスモデルを運用する技術のごく一部と考えることだ。
つまり、商売を行うには、金融知識は必要だが、経理事務と同じように全体の経営技術のごく一部と捉えることだ。マネーゲームでは、金を動かすとすぐに利益が出るので「金融知識」を経営技術と誤解してしまうのだろう。しかし、商売全体の技術、AGならゴルフ場運営の技術のごく一部と言える。冷静に全体像を掴めなければ、社会に迷惑を及ぼすものと自覚してほしい。
日本のお家芸とも考えられる「製造業」なのだが、最近の品質軽視の一連の事件は、少々「マネーゲームに傾いた」、あるいは「魅力を感じてしまった」経営陣の「なせる業」であると、私は確信を深めてしまった。
もっと「地に足が付いた経営手法」を身に着けることだ。
↓↓↓こちらは、読書家に人気のあるビジネス小説でマネーロンダリング(資金洗浄)の話。少し前の金融知識が豊富にちりばめられているが、他人事と思えれば一般人でも素直に読める本。この本で学ぶべきは、「お金の魔力」について。
➡TBSドラマ「下町ロケット」の話は、ホントなのかウソなのか?実体験から検証してみる~イモトの演技はオーバー??
➡つながれた鎖「マネーゲームの本質」を理解せよ! テスラ、イーロン・マスク株式非公開化撤回! アコーディアゴルフを思い出す