【トヨタとソフトバンクの提携】第4次産業革命に向けた必然的な戦略 「AIを育てるビッグデータ」が足りない!

トヨタ・TNGA

トヨタ自動車とソフトバンクが共同記者会見を行った。みな歴史的会見といって、ニュースが飛び交っている。両社は共同で自動運転やカーシェアリングなどを手がける新会社を設立するようだ。会社名は、「モネ・テクノロジーズ」。さて、企業体質としては相いれないと思われる両社が、どこまで手を携えていくのか? またこれは、テスラとの提携解消からの流れだ。



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みんなが知らないトヨタ生産方式の資金効率

経済学の学者、経営者など、専門家と言われる人々でも、「トヨタ生産方式」がフォード・GMの生産方式に比較すると数千倍の資金効率となることを知らない。

スバルの製造業らしからぬ汚点

それがなぜなのかは明確にできないが、経済専門家、経営者が製造現場を「上から目線」で見ていたことによるのではないか。例えば、現在、自動車会社のスバルで「品質管理」に問題が多発しているが、経営陣は「弁護士による外部機関」により真実を洗い出す手立てに出た。

それが、経営者の「上から目線」を示している。

↓↓↓スバルは、燃費・排ガス不正以外にも、ブレーキ検査不正が発覚!

これには正直びっくりした。「品質保証体制」は自動車メーカーにとって「基礎の基礎」でなければならないそれは、車が現在でも年間4千人を超える死者を出す不完全なインフラであり、そのため各社は「品質を保証できる組織体制と組織運用」を社会的責任として義務付けられているようなものだからだ。これをスバル経営者は認識できておらず、第三者の弁護士に調べさせて社員が怠慢したと言わんばかりであった。

また、北米でスバルが営業成績優秀なのは、「スバリスト」と言われるオーナー(ユーザー)たちが、自主的に新規オーナーの悩みなど相談に乗って、スバル各車の良さを説いている現実がある。

人は支配され命令されて「99.99%」の良品率を保つことなどできないことを知らなければならない。スバルの経営者が、この「現場の努力」(社員やコアなユーザー)を理解できていなかったことが世間に知られることとなったのが、今回の「弁護士による調査」なのだ。

 

競争力を保っている「日本の高品質」を理解できているか?

私はスバルの記者会見をすべて見たが、「製造業のコストは造り方で決まる」ことも、スバル経営陣は知らなかった可能性を感じる。

スバルも新規の共通プラットフォーム(SGP:スバルグローバルプラットフォーム)で、多品種少量生産・順序生産・混流生産などと呼ばれる、資金効率を上げる生産技術開発を進めている。しかし、経営陣が「その意味」をよく理解できていなかった可能性がある。

利益率は「販売努力」だけで成り立つのではなく、企画・設計・サプライヤーチェーン・製造技術・生産技術・工程管理などの技術体系で決まってくる。

それを組織し、運用しているのは「人間」なのだ。ファンダメンタルコントロールの「るつぼ」と言ってよい日常の作業の中で、1/100%すなわち1/10000の不良をなくす努力は、神経をすり減らす作業なのだ。「気を付けます」で済むような作業ではない。

↓↓↓こちらは、質問サイト「教えて!goo」の引用。『米国本社によるとせいぜいその不具合品(不良品)率は全体の2%だから問題ないという。本当にそうなのか?』という質問に対しての答え。いかに日本の品質基準が高いかがわかる。最近は輸出が旺盛で、工業品だけでなく、日本酒や農産物など物産の品質も評価されてきている。日本の品質を侮っていると、競争力まで失ってしまうだろう。

MILL-STD-105と言う検査基準が有ります。

日本で言うJISですがJISが引用しているので内容は殆ど同じです。
この検査基準は、AQLと言う判定基準が有って生産母数の確率を検査数で判定する数値が決められています。
物品の取引をする時、この検査基準に従い合否の判定をして受け入れするか否か判断します。
合理的な方法ですが、現在の品質レベルから見ると製品が何か解りませんが2%不良の混在が有ると言うことは日本の市場では大きな問題と思います。
日本人の感覚として箱に入っている商品は全て新品で良品が当たり前です。
後進国の感覚は、展示品とかモニターでも今動いている物が良品と言う見方をします。
日本の市場に添った良品率で無いと先行き思いやられますね。
2%は決して海外の市場では取引上問題では有りませんが信頼は徐々に無くなるでしょう。
関係する仕事で有る品物が中国工場で生産している不良率は0.02%ですが大きな問題です。
品物によって差異は有ると思いますがユーザーに渡る段階で2%は現状に有っていないと思います。

 

また、経済学の表現にある「現場に生産手段を与える」などと言った表現は、現実の経済メカニズムを誤解する結果となっている。「設備投資」を考えるとき、お客様に対するメリットだけでなく、社員のメリット・デメリットを考えなければ成功できない。アメリカ社会での労働組合の弱い環境で育った経営者は、「労働者はユーザーである」ことすらも認識できないのか?不思議だ。

 

「自動運転”者”であるAI」を育てる

まずは、「データ不足」が鬼門

近頃「役に立たないAI」が出現してきているが、それはデータの与え方によることが大多数だ。

↓↓↓『AI、データ不足6割 「動かない頭脳」続出の恐れ』:日本経済新聞

完全自動運転を可能にするAIを育てるには、膨大なデータを必要とする。AIは、過去のデータから学習し答えを導き出す。そのデータが画像認識するだけで数十万は必要となる。IT大手のグーグルであっても、完全自動運転を可能にするデータを持ち合わせていないと推測されている。

そのため、トヨタが求めている提携先は、「AIを育てるデータ」を持ち合わせている企業であろう。それが、ソフトバンクとなるのか。

AIにも「推論」が必要

AIが用いるデータ分析方法は「ディープラーニング」と呼ばれている。これは要するに「分類整理」であり、人間の経験値と同じメカニズムだ。たくさんのデータの中で共通法則性を持つものを見つけ出し、その法則の違いによって分類整理する方法だ。人間の「経験則」と同じようなメカニズムだが、膨大な量を必要とするのは、人間とは違うところだ。人間は、「推論」が可能だ。現在、研究テーマとなっているところだろうが、やはりAIにも「推論」の必要性だろう。

運転していて「周りの景色」を見ているだけで、その土地柄を感じ、いま通行している道路の危険性を予測し、対処を決めている人間の実態がある。例えば、ザックリ言って都会の道路なのか、田舎の道路なのか無意識に判断している。「経験則」からの「推論」だ。これを実現するには、どのようなデータをどのようにAIに与えたら良いのかを開発しなければならない。

 

また、将来、カーシェアリングと言っても、「クルマを呼ぶ前に車が来ている」状態を作り出さねばならない。それには「ソフトバンクの持つビッグデータ」が必要不可欠のものである、とトヨタは見ているのだ。

現在、コンビニでは「店舗売り場、面積効率」を上げるため「時間配送」をしている。その時間帯に何が売れるのかを予測して商品仕入れをしているのだ。しかし、それはあくまでも「ポスレジのデータ」であり、「期待損失」は見えていない。

そのため、AIにどれほどポスレジのデータを学習させても、期待損失を防ぐことはできない。データ収集にひと工夫が必要なのだ。それは「広告効果との連動」だ。このデータをAIに与えることが出来ると、物流は改革されるだろう。店舗在庫を激減することが出来て、物流の資金効率が劇的に向上し、それは製造まで及び、ネット利用の方法論も新次元となろう。

 

日本が、再び資金効率で世界をリードする!?

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製造業のトヨタがサービス業の分野までつなげるのであると、受注・生産・販売・メンテナンスなど、資金効率の革命が起きる。

再び、「トヨタ生産方式」が世界をリードできる日が来るかもしれない。そうしないと日本経済の活力が生まれない。金融の専門家は、資金効率と投資効率とを混同せず、世界の経済をみてほしいものだ。

何しろ、「衣・食・住」(モノ)を満たすのが経済システムの根本的な役割だ。それには、金融システムは「補助的役割」であり、「(モノの)製造が伴わないと経済活動は完結しない」ことを改めて理解しなおさなければならない。

ましてや「株式操作」などは、「衣・食・住」から見れば「よけいなこと」と言ってもよいくらいなのだが、「働かずに儲ける」ことが出来るので、現代の株式会社では目的化してしまっている。だから、万が一「バブル」がはじけると、何をしてよいのかもわからないのが現代の経営者たちなのであろう。いや、経営者を選ぶ投資家たちが投機に走り、「バブル経済を起こしてははじけ飛ぶ」を繰り返しているのだ。

↓↓↓大反響のあったNHK経済教養ドキュメントを書籍化したもの。未放送部分も多数収録。●テクノロジーが進歩しているのに、なぜ経済成長できないのか?etc.

 

トヨタ・ソフトバンク、企業体質を乗り越えられるか?

トヨタの体質は、自前で開発し拡大してきた企業体質だ。一方、ソフトバンクはM&Aで拡大してきた。企業体質でみると、真逆だ。

そして、トヨタには「製造システム」がある。ソフトバンクには「ビッグデータ」がある。これは第4次産業革命の社会では、当然の結びつきとなるだろう。

トヨタは、テスラとの提携を解消したが、テスラの企業体質をトヨタが受け入れることはできるはずもない。バブル経済の、そのまたバブルの動きとしか、テスラを評価できないだろう。

【テスラは何を間違えたのか(1)】ファイナンスは経営のすべてではない 天才は必要なし

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問題は、ソフトバンクが「製造が人類には必要」で、それを「コントロールするビッグデータが必要である」ことが理解できるのか?である。

ソフトバンクの孫正義氏が「真に事業家である」と評価できるのかは、ネット時代の「衣・食・住」を理解して、トヨタのノウハウである「製造」を共に成し遂げられるのかが見所であろう。また、豊田章男氏は、この人類の「地道な経済の仕組み」に沿った動きに、ソフトバンクを引き込んでいけるのか?正念場であろう。

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