【コロナ陽性全数把握】医療、医師負担増大の原因はマイナンバー利用の遅れ

社会

コロナ陽性者が増え、全数把握のため医療機関でのデータ入力が負担となって、医師の診療作業にも負担が及び、軽減策が取られようとしています。医療機関の負担が軽減されるのは良いことですが、その対策が真の原因の解決につながるのでしょうか。真の原因とはなんでしょうか?




コロナ対策としては陽性者の全数把握をして、これまでと同等のレベルで詳細にデータをとることが、統計上も必要なことではあります。しかしながら、データ入力のため現場の医師に負担がかかり、診療行為に影響が出ることで、満足な治療が受けられず犠牲者が増えていることが当然に考えられます。

そこで「全数把握を取りやめる」など見直しをするとのことですが、そもそもデータをとることに負担がかかるのは、どこに原因があるのでしょうか?

韓国では同様なデータを収集しているようですが、事務負担が問題とはなっていません。これは明らかに、日本の入力システムに問題があると考えられます。

そこには、コロナウィルス対応で見えてきた、韓国社会などと比較して時のITシステム利用の遅れがあります。つまり、日本の行政などでは未だに紙ベースの処理が行われ、そのため日本全国で膨大なムダな事務作業が生じている実態です。

その理由は、システム技術で見ると、「マイナンバー」の利用が半世紀以上滞ってきた実態があるからです。行政のITシステムの遅れは日本社会全体の効率を落とし、GDPの伸び悩みの一因となって表れてきており、世界と比較して日本国全体の没落の様相を呈してきました。

この「不都合な真実」の実態を正面から考え、改善の道筋を見つけてみたいと思います。

コロナ陽性者の全数把握は必要なのか?

コロナ陽性者の全数把握については、賛否両論が出てきています。

①医療体制の維持、拡大

対策を取らねばならない必要性があるのは、目の前の問題としては全数把握の事務処理を削減することです。そして、医師の力を医療行為に集中させなければなりません。

②統計数字は「同じ基準」で収集されていなければ意味をなさない

コロナ陽性者の数は、初めからの同一の基準での収集が必要なのです。基準をその都度変えてしまうと、政策立案するための判断の基準とはならなくなってしまうので、情報収集の変更には注意が必要であるとの指摘があります。

ここで覚書としておきたいのは、三重県が独自に行っている「定点サーベイランス」についてです。この記事での趣旨とは違ってきますので詳しくは述べませんが、この「定点サーベイランス」はデータの重要性を物語っています。参考記事:全数把握の見直し、「現在の議論はあまりに大雑把」- 谷口清州・国立病院機構三重病院長に聞く(m3.com)

 

では、なぜ、全数把握が韓国では問題にならず日本で問題になるのか?

これが日本の問題の本質であることを、これから見ていきたいと思います。

全数把握は、「政策の判断」にも「学問的研究」にも必要なことです。

しかし、現在、日本のデータ収集システム(HER-SYS「ハーシス・新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム」)に対しての入力作業では、詳細な個人情報も入力しなければならず、かなり煩雑な状態です。

 

・もし、マイナンバーとマージできれば、どうなる?

でも、もしこれを「マイナンバーの登記簿とのマージ」により、自動入力が出来れば、全数把握のため医療機関でのデータ入力などでかなりの手間を省くことが出来るでしょう。

さらに、保険証ナンバーとのマージができれば、ワクチン接種、過去の病歴との照合が瞬時に可能となり、ワクチン接種や医療行為の場合にも大幅なデータ入力手間の削減になり、医療行為にも良い影響が考えられます。

つまり、システム構築の技術的視野からは、コロナ陽性者の全数把握問題の真の原因は、「マイナンバー」の活用が進まないことにあるのです。

ここで「スイスのビジネススクールIMDがまとめる2021年の「世界デジタル競争力ランキング」を見てみましょう。日本は28位に低迷しています。

スイスのビジネススクールIMDがまとめる「世界デジタル競争力ランキング」

出典:競争力挽回へ真のDXを(日経新聞2022年4月18日)

 

実は、全数把握に必要なマイナンバーは、半世紀前から提案があった

1970年を過ぎた頃、当時の松下通信(現パナソニック)の唐津一 部長、後の故 唐津一 東海大学名誉教授が、現在のマイナンバーに相当する「国民総背番号制」を提唱していたのをご存じでしょうか。唐津一 東海大学名誉教授(Wikipedia)は、システム工学者です。

「国民総背番号制」、つまりマイナンバーはシステム設計の視野から見れば当然のことでした。でも、個人情報の管理が確立できていないとの懸念が当時から強く、現在のマイナンバー制度の展開停滞に繋がっています。

・唐津教授が提唱していたマイナンバー制度が確立できていたら、どうなっていた?

でももし、唐津教授が提唱していたマイナンバー制度が確立できていた場合、今回の対応はどうなっていたでしょうか。

まず、

・「コロナワクチン接種券(クーポン券)」の電子配布が可能

さらに、保険証Noとリンクされていれば、

・病歴についても接種会場の医師がその場で確認が出来た

「問診」もほとんど省くことが可能で、接種予約にも一工夫加えて、

・事前に指定する方向で、ネットで予約が出来た

だから、天候が悪い中、行列することもなかったはずです。

また、現在問題になっている

・医師の事務処理負担が当然に減る

予約電話の応対が必要がなくなる

・恐らくは9割程度の煩雑な作業が削減できた

もちろん、

・保健所の仕事も大幅に簡素化出来た

そのため、よりフォローが必要な人に集中できたはずです。

このように、唐津教授が提唱していたマイナンバー制度が確立できていたら、関係者が本来の仕事に集中できていたはずで、そしてなにより、何人の患者が救われていたことでしょう?

計り知れません。明らかに、行政のシステム構築が諸外国に比較して遅れてしまった実態が見てとれます。

↓↓↓唐津一名誉教授の著書、『ビジネス難問の解き方 壁を突破する思考』(PHP研究所)を紹介します。昨今は問題から逃避しようとする志向がはびこっているけど、この本は「問題をどう見つけるか」を説く本。問題を見つけて解決しなければ、発展しないということを言っている。

 

マイナンバーは既に全国民が保有しているのに利用されないわけは?

では、なぜこんなに有効なマイナンバー制度が構築されず、利用されなかったのでしょうか?

1つには、縦割り行政がのマイナンバー利用を阻んできたと見ることが出来ます。日本の行政の縦割り体質は、行政横断的な運用ができません。

ではなぜ、現在行政はマイナンバーを推進しているのでしょう。

「マイナンバー構想」は「銀行預金など金融商品、固定資産」と結び付け、「脱税予防」が政府の本音です。それが本来の有効性の邪魔をしてしまいます。本来は、国民の利便性に利用されて、同時に不正防止になるように展開しないと普及しないのです。

現在の日本の行政では、税務署と厚生労働省が結び付くのは考えづらいことです。コロナ対策において、厚生労働省と他の省庁の壁を超えていなければ、現状のような残念な結果に終わるのは目に見えています。

でも本来は、マイナンバーは既に国民全員に付加されているので、ワクチン接種で利用すればよかったはずです。新たに法律を作っても良かったはず。

本人確認の手段としてはマイナンバーカードの普及が望まれますが、マイナンバーの通知は国民一人一人に行き渡っているはずで、それと保険証、免許証などと合わせれば、マイナンバーで一貫した管理が可能であったはずなのです。

こうした、国民の立場に立った利用促進策が考えられてこないのは、「行政の怠慢」としか言えないです。それは同時に「国民の怠慢」であり、国民から批判されないのであれば、行政が動くはずもありません。

マイナンバー利用促進は、個人情報管理が課題

また、マイナンバー促進には越えなければならない課題があります。

これまで半世紀の間、マイナンバーが利用されてこなかったのは、十分な「個人情報管理体制がない」ためです。なので、国民は反対せざるを得ないのです。

最も注意しなければならないことは「民主主義の保全」です。

国が独裁政権であった場合、個人情報を使って国民を支配してしまうのは目に見えています。中国などのように、「時の権力」が国民一人一人の言動を管理統制してしまう事例を見ることが出来ます。現在の世界情勢を見ても、個人情報を使って人権侵害が起きてしまっています。

そこで「民主主義の基本」を確保するため、国会に個人情報を管理するシステムを作ることが必要です。行政の管理では、時の政権が都合よく使ってしまう懸念はぬぐえないからです。

個人情報管理の遅れは三権の怠慢、つまり国民の怠慢が危険

現在、日本社会は長く平穏であり、三権の緊張感がありません。三権分立は、覚えていますよね。

日本国憲法は、国会、内閣、裁判所の三つの独立した機関が相互に抑制し合い、バランスを保つことにより、権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する「三権分立」の原則を定めています。(衆議院公式サイト)

国会(立法府)を考えても、「憲法判断」により国の運命が決まるなど追い詰められた状況にはなく、かなり怠慢にその時の事務処理のように法律を捉えている事例が見られます。でも本来は、法律からの視野だけでなく、国民の立場に立って「社会正義とはいかなることか?」と問い続けなければなりません。裁判所(司法)においても、事務処理に流れ、怠慢であることは大きな懸念です。

立法府である国会議員の不祥事は後を絶たず、現在も、宗教団体とのつながりについて、かなりの曖昧さが見て取れます。行政府は「利権の巣」と化した感もする、極めて整合性が取れない政策が見られます。オリンピックも巨大な利権として、裏金が飛び交っていたことが見て取れますし、地方行政府も行政の都合で言動するなどの傾向が見られます。

この状態は、国民が見て見ぬふり、あるいは積極的に利権を確保しようと働きかけるなど、とんでもない状況が当然となっています。そうしているうちにも日本社会は「先進国」とは言えないレベルまで経済活動も停滞し、現在、円安にあえいでいるにもかかわらず、行政府は手立てを打てない状況です。

長年の国民の怠慢が、こうした三権の状態を作り出し、現在、これほど行政システムのIT化が遅れていることも理解できません。

コンピュータ利用の教育も遅れており、情報南北問題などが起きています。これで経済の活性化は望むべくもなく、近い将来、経済的に中国経済圏に飲み込まれる危険があります。既に韓国経済は中国が貿易相手国としては1位になっており、日本経済も同様です。

【コロナ陽性全数把握】医療、医師負担増大の原因はマイナンバー利用の遅れ:まとめ

日本国社会でのIT技術の利用の遅れは、GDPに影響が出てきており、この状態では、国民の生活が成り立たなくなってきてしまいます。

GDPを上げるためには、まず、国会で個人情報管理システムを受け持ち、マイナンバーの利用促進を図り、日本国全体の効率を上げることが急務です。

行政の効率化は、AIの導入などでかなり促進できるはずです。銀行ではすでにリストラが始まっており、事務処理に関してAIで行なえる仕事が大半であるはずです。

縦割り行政システムをカイゼンして、最も効率的なシステムを早急に構築することです。技術的には容易であるはずなので、あとは国民がやる気になるのかです。コロナ陽性者全数把握についての議論を聴くと、行政システムの問題であることを避けているようにさえ見えます。

識者と称する基準についても、現在はITの知識を持っていることを前提としなければなりません。さらに、ジャーナリストの知識レベルも問われているのであり、国民全員がITの知識を身に付けなければならないのが現代です。

もう、紙のワクチン接種券は見たくない!!!!