【ホンダ・ジェット出荷数で世界一】MRJはボーイングから国産機を取り戻す戦い(2)

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あれから30年の月日がたったようだ。ホンダのビジネスジェット開発計画を知ったとき「まさか!?」と感じたのだが、「ホンダだね」と納得もした。自動車メーカーが航空機部門を持つこと自体驚きだが、「エンジンを自社開発する」と聞いて「さすがに本田宗一郎」と信じられない気持ちだった。それは「無理だろう!」「失敗して本田宗一郎の名に傷がつく」と感じたりもした。「晩年の偉大な経営者が犯す過ち」とも感じた。(アイキャッチ画像引用:http://www.honda.co.jp/jet/gallery/)



■ホンダオリジナル、ターボファンエンジンとは、びっくり仰天!

ホンダジェットについて、ビックリ仰天なのがターボファンジェットを独自に開発したことだ。飛行機用ジェットエンジンは、自動車用エンジンとはわけが違う。メカニズムとしては、自動車用のレシプロエンジンよりも単純だが、熱効率の良いエンジンにするには経験がものをいう。

私は、戦後初の国産旅客機の設計製造メーカーに居たことがある。

YS-11の日本航空機製造時代、エンジニアから聞かされたのは、燃焼室の問題だった。ジェットエンジンは前方の圧縮タービンにより空気を取り入れ圧縮して高温になったとき、ジェット燃料ケロシン(軽油)を噴射して燃焼させる、しかし、燃焼室で燃焼させるのは3割程度で、大部分は燃焼室の冷却に使われ、そのまま噴射される。

戦闘機などでは、その排気にさらに燃料を噴射して燃焼させる。アフターバーナーと言われるもので、推力を2倍程度にする。これは武装して重くなった離陸の際や、空戦モードの場合などに使われる。

映画「トップガン」などでトムクルーズの乗るF-14が離陸、あるいは空母から発艦するときなどの映像で見ると、極めて明瞭に分る。戦闘機としての性能の見せ場だ。しかし、燃費はひどく落ちる。ビジネスジェットに装備するはずはない。

↓↓↓ストーリーよりも飛行機F-14を観察してしまう「トップガン」

 

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逆にホンダ・ジェットはターボファンを採用している。このエンジンはターボエンジンの前方に大径のファンを取り付け、推力を得るものだ。YS-11の場合、ターボプロップエンジンであった。これはターボエンジンの前方にプロペラを取り付けたもので、大部分の推力をプロペラで得るものだった。当時の技術では、燃費が良い方式で、小型旅客機では短距離のため、燃費を考えこの形式が選ばれていた。

 

余談だが、YS-11のプロペラの制御は基本的にゼロ戦と同じで、あの時代にこれほど自動制御が出来たとは考えられなかった。しかも、それを油圧システムで実現していたことに感心した。先輩からは「プロペラが分れば飛行機は1/3分ったことになる」と言われていた。もう忘れたが、「坂井三郎空戦記録」後の「大空のサムライ」で描かれた、負傷して基地に戻るとき、坂井三郎が燃料を節約するのに、このエンジン回転に最適なピッチコントロールをする姿が書かれていた。プロペラのピッチコントロールは、それほど大切なものだった。

 

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現在では大型旅客機は、搭載エンジンが進歩するに従い、ますます前方のファンの径が大きくなり目立っている。しかし、ホンダ・ジェットの外径は、とても小さいのが気になっている。エンジンカバーを取って、ファンの径とタービンの径を見せてほしいものだ。

 

■見えないハイテクで、カーボン素材を多用し軽量化

日本のお家芸になってきているが、ボーイング787、エアバスA380など日本のカーボン素材を多用している。我々にもゴルフクラブで身近な存在であるカーボン素材は、自動車産業でも使われ始め、これからの素材として期待されている。

↓↓↓セイコーの「ホンダジェット限定モデル」(2000本)。もちろんシリアルナンバー刻印ありで、ホンダジェットの胴体に用いられているカーボン複合材をイメージしたパターンダイヤルなど、この時計にしかない施工がほかにもある。

 

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そう言えばば、現在まで多くの航空機で使われてきた「超々ジュラルミン」は「ゼロ戦の軽量化のために開発された」ものだった。

 

■日本の国産機は、政治力でボーイングに吸収されていった

日本ではこれまで、短距離旅客機としてYS-11が開発されましたが、180機で生産は打ち切られてしまった。

その時、次期国産旅客機の計画は進んでおり、「Y-X」計画と言われていた。さらに「Y-XX」計画もされていたのだが、これが何とボーイング757と、続く767であった。当時、アメリカは貿易赤字を問題視しており、日本に国産機を作らせたくなかったのだ。さらにY-Xにつく国家予算をボーイング社の次期開発計画の予算に取り込む工作をしていた。ボーイングと言えども次期計画は社運を賭けるものとなってしまい、日本の国家予算を使ってまでリスクの分散が狙いだったのである。それをみて、”まだまだ日本は占領されているのだ”と実感したものだ。

Y-X計画が政府の判断で止められたため、当時の国内有数の技術者たちが遊んでしまっていた。SEであった私のコンピュータ室の隣で、人名事典に載っている設計技師たちが、トランプをしたり、当時の機械式計算機を枕に寝ていたのだった。

そして、ロッキード事件は明るみに出たが、ボーイングは日本の技術者と共に、国家予算を手にしていた。同期の設計技師たちは皆、ボーイング社に出向となり、アメリカに渡って757・767と設計していったのだった。

 


現在、MRJ(三菱リージョナルジェット)は苦戦している。しかし、フランスとドイツ連合のエアバス社でさえ、10年間は赤字であったと聞く。「政府予算で後押しをしない限り、民間旅客機開発商売は成り立たない」と覚悟すべきなのだ。今度こそ、アメリカに吸収されることなく、国産機の開発を保持すべきなのだ。軍用機でも、国産攻撃機の開発ができず、アメリカ機を使うことを押し付けられたのだ。F-16改F-2だ。日本は独自にF-22クラスの機体を作れるはずだ。

 

人工衛星打ち上げロケットも一時、アメリカに吸収されてしまいそうになった。しかしH2ロケットは立派に実用化に至った。今度こそ、日本政府は、政治的工作に負けずに、国産旅客機の開発を軌道に乗せるべきで、ボーイング社の下請けに甘んじる必要はないのだ。(←記事トップ(1)に戻る

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