【みんなが分かりづらい第4次産業革命(3)】イーロン・マスクの果たす役割とトヨタが考える体制

トヨタ・TNGA

もしかしたら、テスラモーターズのCEOイーロン・マスク氏は、歴史的に第4次産業革命をけん引した人物となるかもしれない。しかし企業として、トヨタとの対比では違いが明らかである。トヨタがテスラとの協業を破棄した理由もわかってくる。




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 テスラのイーロン・マスク氏の果たす役割と問題点

イーロン・マスク氏など、こうした先駆者の役割は「人類の進歩」に果たす重要度は高い。彼が、EV(電気自動車)の可能性を示したことは間違いない。そして、注目すべきテスラモーターズの機能は、「営業と整備」だ。営業は「ネット」で、整備は「サービスカー」であることだ。これまでのディーラー体制を破壊した。この点では逆に、国とディーラーの「利権」で身動きとれないというのがトヨタの本心であろう。

↓↓↓所有者の自宅に出向いて修理作業を行うため、サービス用のバンを350台と計画するテスラ。テスラの車にはワイヤレス通信システムが搭載されており、メンテナンスに関する問題の9割を遠隔診断し、サービスセンターへ持ち込まなくても修理可能か判断することができる。テスラはサービス車両で8割のケースに対応可能だとみている。

一方で、IT企業出身者のイーロン・マスクが気づいていなかったノウハウは、「製造」「生産」技術だ。コンピュータの世界では、「プログラムが組めれば完成する」と勘違いしている人が多い。ゲームソフト製造販売を考えればわかる。

しかし、自動車では現実に人を乗せて走る車を造らねばならない。それには「製造技術」「生産技術」が必要だが、「品質保証」がなされねばならない。そのために、日ごろからの組織運用を工夫し、「造る人のモチベーション」までコントロールできなければならないのが、「製造」「生産」技術だ。

トヨタの体制と言動

これは、今回の平昌オリンピックで示された、「日本女子パシュート競技」のことを思い浮かべればわかる。綿密な作戦と実行で勝利を掴んだが、チームプレーの重要性が称賛された。韓国チームと対比すればよく分かるはずだ。

日本チームは、年間300日チームメイトで寝食を共にし、乱れない走りを見せた。その陰には、科学的解析を進めるチーム、道具を作る職人、メンタル面までサポートするコーチなど、体制整備と運用がなされている。この仕組みに、「トヨタのかんばん方式」の中身を見ることができる。

↓↓↓「一糸乱れぬ隊列」「高速の先頭交代」「エースを生かしきる」など、詳細は下記記事をどうぞ!

この話と比べてみても、2018年2月22日放送のBSフジ・「プライムニュース」【「第4次産業革命」の衝撃 日本企業の勝機と戦略】の番組出席者の認識は、「製造」についてあまりにも稚拙であることが分かるはずだ。

国家の頭脳との言うべき人々のこの姿は情けない。まずは「製造」とは、オリンピック女子パシュートのごとく、チームワークと体制づくり、メンタル面の世話など、組織運用技術を含めて、全てが揃わないと、成しえないことなのだと理解してほしい。トヨタは、いえすべての製造業は日夜、努力しているのだ。

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