国立情報学研究所の新井紀子教授が開発した、基礎的な読解力を判定するリーディングスキルテスト(RST)を実施してみたら、想像以上に子どもたちが文章を理解できていないことがわかった。読めて当然と思っていた大人たちは愕然とした…。一方で、文部科学省の調査では、日常的に本や新聞に親しんだり、規則正しい生活を親が努めている家庭の子供は、親の収入や学歴に関係なく好成績の傾向があることがわかった。やはり、SNSやゲームだけに没頭するのは良くないのかもしれない。
学校のテストで問題が解けているのに、読解力がない!
国立情報学研究所の新井紀子教授が開発した、基礎的読解力判定のリーディングスキルテスト(RST)では、
・生活体験や知識を動員して、文章の意味を理解する「推論」
・文章と、図形やグラフを比べて一致しているかどうか認識する「イメージ同定」
・国語辞典的、あるいは数学的な定義と具体例を認識する「具定例同定」
をはじめ、読解力を6分野に分けて、その能力を判定する。
その結果、イメージ同定、推論、具体例同定の正答率が半分に達せず、想像以上に子どもたちが文章を理解できていないことがわかったのだ。
このテストを実施した学校は、学力調査で平均以上のところだった。なのに、この結果が出たことに校長もビックリしたようだ。
驚くべきことは、学力は高いのにこのRSTテストでは結果が悪いという現象。つまり、「学校のテストはできるのに読解力がない」ということ。これは、ただ単に子供たちは暗記がうまいと言うことになる。
これには、筆者自身も思い当たることがある。あるメールマガジンを長年発行しているが、20年ほど前から”文章が長すぎるから”という理由で解約する割合が多いということだった。たしかに、ほかの同類のメルマガより文章の長いメルマガで、それも情報ではなく経営の教科書的なものだ。当初、読者はビジネスマンが多いから、忙しくて読む時間がないのだろうと思っていたのだ。
でも、それは違うなと感じたのは、コンサルティングをして多くの若い経営者たちと話す時だ。たしかに、上記RSTテストにある「推論」に疎い人が多いと感じたことだ。字面を暗記することは得意でも、その文章のウラにある「知」のかたまりに想像力が使われていない様子がわかるのだ。だから、ほとんど質問もでてこない。ただ、彼らは情報を良く知っている。しかし、それがどんな意味を持っているかを聞いてみると、答えは出てこない。
彼らは応答もよく、私の言ったことをわかってくれていたようなのだが、しかし、いざ実践してみると全然違ったことをやってしまうのだ。これは、コミュニケーションがとれているようでいて、実はそうではないということにもなり、学校はもとより、成長して現実社会に出た時、大変問題になるはずだ。というか、現にそうだ。
この問題は、すでに昔からその傾向があったと思っている。教育方法の間違いを正さなければならないだろう。
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スマホを長時間使用するほど、学力の偏差値が落ちる
ニンテンドーDS用ソフト「脳トレ」シリーズの監修者としても知られている東北大学の川島隆太教授も調査している。ある小中学校の児童・生徒7万人を対象に追跡調査した結果、
スマホの使用で明らかに学力が低下し、使用を中止するとまた学力が向上するということが分かったという。
17年度の調査では、LINEなどを全く使用していない生徒の4教科の平均偏差値が50.8なのに対し、使用時間の長さに応じて偏差値は下がっていき、1日4時間以上使用している生徒の偏差値は40.6。
これは困ったことだ! でもやはり相関関係があったかという感じだ。
そうなる理由は、勉強の効率が落ちることだという。スマホを気にするあまり、集中して勉強ができないのだ。
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恐ろしいのは、言語機能の発達に遅れがでること
また、スマホを長時間利用すると、読書をした時に活発に働く前頭前野に、安静にしている時よりもさらに働かなくなる「抑制現象」が起き、健常児でも言語機能の発達に遅れがでることがあるらしい。これは、ゲームやTVでも同じことらしい。
前頭前野というのは、人間にとってきわめて大事なところ。ここに損傷があると、最悪、連続殺人魔になることだってあるのだ。連続殺人犯の脳を解剖してわかった研究が、たしかアメリカであったことを記憶している。
現在問題になっている「アスペルガー症候群」など発達障害も、前頭前野に問題があると言うことが一部わかってきているとも言われている。
AIが発達するということは、人間の退化?その前に…
人間が前頭前野で行う、つまり人間が最も得意とする「思考」や「発想」が、スマホやテレビ、ゲームなど、人間が生み出した機器によって衰えつつあるとしたら本末転倒ではないか??? RSTテストを開発した国立情報学研究所の新井紀子教授も、そう言っている。
現在、個人的な感想がSNSで、それも単純な言葉で飛び交っているが、その対象となっている問題が「なぜ」起きているのかを思考するのが人間だけに備わっている能力なのだ。それを養ない続けていかないと、大変なことになる。
大変なことというのは、人間の退化かもしれない。しかしそれよりも前に、以下の記事のように、日本の大学も世界において存在感が低下しているという。日本の「知」がやせているという話。上記RSTテストの結果が関係ないとは言えないだろう。
東大も京大も地盤沈下 データで見る大学の研究力:日経https://t.co/3SaDS6vrd7
日本の大学 痩せる「知」 東大、中国・清華大に後れ:日経https://t.co/JUPEW0Bxt5
日本苦戦、100位内に4校 大学「論文の生産性」 アジア勢と差拡大:日経https://t.co/e9CoIFpPhH
— 世界四季報 (セカ報) (@4ki4) 2018年6月4日
2002~06年の論文数では東大は米ハーバード大学に次ぐ2位、京大も8位につけていた。研究の質でも欧米の有力大学のグループに次ぐ位置につけ、研究活動は世界でも有数だった。ところが12~16年になるとその構図は崩れる。学術論文数、研究の質で欧米の有力大学はその地位を維持する一方、日本の大学はいずれも順位を大きく落としている。(上記、日経新聞記事より)
こうなると、日本の国力が落ちることになる。国際情勢が激変する中、経済力も知力も世界に示せなくなるとどうなるのだろうか?
問題解決の方法は、読書と規則正しい生活
そこへきて、日本経済新聞社の記事。これはカイゼンできるかもしれない。
絵本の読み聞かせは、
子どもの情緒を落ちつかせる
最も強力なツールであり、
親子の親密な人間関係の基礎となる。また、親の方も前頭前野が活性化する
という科学的データも。#絵本 #読み聞かせ #親子#精神科医 #名越康文
#タケ小山 #take1134 #radikohttps://t.co/8fYvF3WMqf— TheNewsMastersTOKYO (@joqrnewsmasters) 2018年7月1日
文部科学省の調査で、日ごろから本や新聞に親しんだり、規則正しい生活を促したりしている家庭の子供は、親の収入や学歴が高くなくても好成績の傾向があることがわかった。
調査の方法は、小学6年と中学3年の国語、算数・数学の成績と、抽出校の保護者約14万人へのアンケートを分析。保護者の年収や学歴など家庭の社会・経済的背景を指標化して4階層に分け、テストの平均正答率と比較。
結果、親の収入や学歴に関係なく、生活の習慣や親の意識が子供の学力に影響を及ぼす可能性があることを示した。
最も低い階層でも学力が全体の上位25%に入った子供の家庭では、「小さいころ絵本の読み聞かせをした」「本や新聞を読むように勧めている」「毎日朝食を食べさせている」「計画的に勉強するよう促している」などを行っていた。
自制心や意欲、忍耐力を表す「非認知スキル」と呼ばれる子供の能力と、正答率の高さには緩やかな相関関係があることがわかり、中3より小6の方にやや強く現れたという。それはつまり、家庭の経済力より、上記赤字の部分を行うことにより学力が上がり、それは成長するほど顕著に表れるということになる。
そうすると、総論として子供にどんな教育をしていけばいいということが分かってくると思う。