テレビ番組・BSフジの「プライムニュース」があります。月曜日から金曜日まで午後8:00~10:00まで2時間にわたって放送され、基本は1つのテーマについて専門家を集めて議論している。安倍首相がアメリカでトランプ大統領と会談した直後、空港から直接スタジオに現れコメントするなど、注目されるテレビ番組だ。
2018年2月22日【「第4次産業革命」の衝撃 日本企業の勝機と戦略】との題名で放送があった。
本日は『第4次産業革命の衝撃 日本企業の勝機と戦略』と題し、平井卓也 自由民主党IT戦略特命委員長、村上憲郎 元グーグル米国法人副社長兼日本法人社長、夏野剛 慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授、小林亮 浜野製作所営業企画部副部長を迎えます。#primenews #bsfuji
— BSフジLIVE プライムニュース (@primenews_) 2018年2月22日
キャスターはフジテレビ報道局解説委員長、反町理氏で、出席者は下記のとおり。
「グーグル・アメリカ法人副社長・日本法人社長」、「慶應義塾大学政策メディア研究科特別招聘教授」、「自民党IT戦略匿名委員長・当広報本部長」、「浜野製作所営業企画部副部長」
この番組は、メンバーにもよるのだが、専門的見地から政治経済など突っ込んだ議論が聞かれ、テーマによって参考にさせていただいている。だが今回「第4次産業革命」について議論を聞いていると、政府、学会などでどのような認識があるのか?など参考になる議論もふんだんにあったが、「製造」については、キャスターを含めてどの出席者も「素人」丸出しの状態であったことに衝撃を覚えた。これは、国の頭脳を代表する人々が「製造業」を理解できていないことになり、危険だと感じた。「問題提起」を目的にこの記事を書きたい。
産業革命についての、現在までの学問的認識
まず、世界的、学問的に産業革命の認識についてだ。
(1)【第1次産業革命】は蒸気機関による量産の始まりだ。蒸気機関の発明で、工場の天井側にシャフトが通され、蒸気機関により駆動されているシャフトと工作機械をベルトで結んで手工業から量産への動きが始まった。手工業と同じ「ロット生産」での量産だ。
(2)【第2次産業革命】は電気の発明による電動化であった。工作機械は個別に装備されたモーターにより駆動され、より動力のロスがない駆動装置で量産化が進んでいった。「ロット生産」に変わりはなく、工作機械の性能向上による生産量の増大がなされた。しかし、「ロット生産」による在庫・工数配分など「ムダ」が顕在化していった。
(3)【第3次産業革命】はデジタル制御、つまりコンピュータ制御の始まりであった。NC工作機械が複数の工程を連続して行うなど、小人化がすすめられ、よりコストダウンが進められた。NC工作機械の「多能化」により「行程結合」が顕著に進められるようになっていった。
※):BSフジの番組の中で、大学教授がしきりに「数値制御が始まった時期を20年前」と言っていたが、コンピュータ制御機械が導入され始めたのは半世紀ほど前からだ。私は、そのころ導入を進めていた購入責任者であり、現場作業者なので間違いはない。どのような基準で導入時期を決めているのかは分からないが、この大学教授が、ラインの組み方など製造の現場を知らないことは確かだ。
(4)【第4次産業革命】と言われる動きは、インターネットの普及によるものだ。工作機械などだけでなく「顧客と生産工場が結ばれ」、いろいろなサービスも生まれてきた。究極の「行程結合」が可能となった技術だが、現実には製造・生産技術がロット生産から進歩できない工程も多く取り残されている。「下請け」と「メガサプライヤー」の在り方が問われることになる。
以上が概略、現在社会で常識的に認識されている産業革命に関する概念だ。決して現在言われている産業革命の区分は、学問的分類として間違っているものではないが、これは学者が現実の「製造業」を知らないために認識している産業革命だ。
経済活動は、資本主義である以上、資金効率を求めての技術開発であり、その基準で見ると、動力源の技術的進歩は当然にあるが、それによってもたらされる「ソフト的進歩」に目をつけるべきだ。学者、政治家、ジャーナリストなどが、一方で、これを理解しないことは、危険でもあり、認識を見直してほしいものだ。続きは:【第4次産業革命(2)】テスラ・トヨタを理解できる産業革命の認識は「資金効率」
➡【TNGA(Toyota New Global Architecture)-1】