自動車メーカー操業停止 破綻はどこから? 行政組織はガバナンス不備が鮮明に【品質管理のはなし】

新型コロナウイルス

新型コロナウイルス感染拡大によって、産業に大きなダメージを受けている。自動車産業ももちろん同様で、中国・ヨーロッパではすでに再開を模索している状況となった。けれど、日本国内(トヨタ・日産・ホンダなど)は稼働停止状態だ。それによる今後の社会・経済への影響が心配される。それと比較して、行政の様子もみてみたい。それは、品質管理・組織運用の観点からだ。



 

新型ウイルスで、自動車メーカーの破綻はどこから?

2020年4月24日時点、日本国内自動車メーカーの操業停止計画が発表されてきた。

これまで自動車メーカーの早い時期での操業停止の理由は、「部品調達が困難」であることが第一の原因だった。今度は、「販売不振からの在庫調整」が主たる原因とみられる。

詳細な操業停止原因は発表されていないので、各社スケジュールのみの情報だ。これでは各メーカーの実力は判明しないが、いよいよ資金繰りが苦しくなってくる情勢の中、サプライチェーンまで見通す必要が出てきている。

↓↓↓停止中はマスクとフェースシールドを生産していたランボルギーニは、生産活動再開!『大切にしているのは従業員のみなさんの安全であり、それを守るために安全面での厳格な手順も実施していく』とコメント。


日産自動車、ホンダ、スバルなどは、サプライヤーは世界の巨大企業が中心で、トヨタほど系列企業を抱えてはいない。そこで破綻が近づいてくると、トヨタは系列の分まで資金を調達しなければならない。日産、ホンダ、スバルなどは、”サプライヤーは別経営”と割り切れば、特別な部品などを除いて自社の生き残りを考えれば事足りる。

さて、どちらがどの様にして破綻が出てくるのだろうか?

 

行政組織のガバナンス不備、企業組織との違い

企業と行政の組織運用の違い

日本では新型コロナウイルス感染拡大により、仕事量が増え負荷がかかってしまっている組織が目立ってきた。まず、「検査機関」や「病院」である。同時に、それらを管理下に置く「保健所」が「パンク状態」になっている。これらは国民の命を守る組織であり、ご苦労には感謝しなければならない。

それに対して、自動車メーカーの組織運用では、「2交代、3交代」を含めて稼働を調整している。生産量が多い場合、8時間ごとの3交代制で24時間稼働も行っている。これで仕事量の調整に幅を持たすことが出来ている。

しかし、「病院」では基本的に24時間稼働である。このマンパワーの確保が非常に困難だ。行政組織である「保健所」は同様なのであろうか。現在「目いっぱい」となっているが、「基本的に2・3交代制は出来ない」と言っている。

「定型業務」と「否定形業務」を分ける

現在、目いっぱい努力している「保健所」所員たちには酷な話だが、「応援」要請が十分にできないことを反省しなければならない。県庁では現状仕事が減っている部署もあり、ボランティアを募る方法もあるはずで、「保健所」の応援人員を集めることは可能となる。

しかし、応援を呼ぶ時は、「専門性」のある仕事と「アルバイト」「ボランティア」でも応援できる仕事との「区分け、関連性の整理」が出来ていないとうまく応援できないことが起きる。

つまり、「管理技術の基本中の基本」である「定型業務と非定型業務」との分離だ。これが出来る管理職が「優秀」なのだ。意外に専門職では理解が進んでいない。

「定型業務と非定型業務」の分離で効率を上げる方法

仕事の管理技術で最も基本は、「定型業務と非定型業務」との分離だ。この「分離」が出来ていない組織は、管理技術的に「日ごろから非効率的」と見ざるを得ない。どうやら「保健所」は日ごろから「定型業務と非定型業務」の分離が曖昧で、管理が不十分であるようだ。

今回の新型ウイルス感染拡大のような非常事態の折は、分離が日ごろからできていれば、「定型業務」を専門外の応援(アルバイトやボランティア)の人材に任せ、「非定型業務」を保健所の正規所員など専門職が担うことが出来る。

これで、応援を集めても効率的に使うことが出来るのだ。これは、どのような組織でもどうしても必要な「管理技術」である。しかし、専門職であるほど「管理技術」の概念すらない人が多く存在するのも事実だ。

だがこれは、「仕事の品質」を向上させるために基礎となる最重要項目であるので、管理職であるほど覚えておいたほうが良い。

「管理技術の優劣」が組織運用のレベルを表す

自動車メーカーにおいても、このような管理技術のばらつきはメーカーごとにレベルは違うはずで、これで「経営技術のレベル」を図ることが出来る。

新型コロナウイルス感染拡大の最中、自動車メーカー各社の詳細な内部情報が出てくるのはいつ頃になるのかは分からないが、この情報に注意しよう。

また同時に、日本の行政機関のガバナンスレベルを注意深く検証していこう。残念だが、現在の厚生労働省、内閣府などを含めて、行政組織全体として非常に低いレベルであることが露呈している。それは、すでに「アベノマスク」のてん末で知れている。「国民の必要性(MR)」も「品質管理(QC)」も概念にないからだ。

↓↓↓国民に多額の費用をかけて配布したマスクに不良品が続出。衛生用品なのに品質管理ノーチェックなのも問題だが、ほかにも不明な点が…。

行政の矛盾はどこからくる? 正義より法律が優先?

また、当然ながら「法律」の規定で行動する行政機関が、今回のように「現実の正義」と「法律」とに矛盾が生じてしまった時に「大問題」となる。

今回の新型コロナウイルス感染拡大に際して、「PCR検査を絞り、クラスター管理を進める方向」に舵を切った政府の判断がこれに相当する。それによって「人命が失われている」。

つまり、この場合の正義は?「出来るだけPCR検査を広げ、早期に陽性者を隔離すべき」であった。しかし、PCR検査の能力が少ないため、PCR検査能力を民間を含め全力で向上させる方向ではなく、検査対象を絞る方向であったことは、『人命を尊ぶ社会正義に反している』ということだ。

 

「新型コロナウイルス感染」対策は「品質保証」対策と基本は同じ

「アベノマスク」の品質のばらつきは、厚生労働省、内閣府などの「品質管理レベル」が全くと言ってよいほど機能していないことを暴露している。

行政機関には「TQC(総合的品質管理)」の概念はないようだ。これは「緊急事態法制を整備する」よりも前に、組織のガバナンスは「組織員の気持ち」にあることを理解することから始めなければならない。

TQCは、「製品の品質を管理するためには、製造部門だけに任せていては効果が限定されるので、営業・設計・技術・製造・資材・財務・人事など全部門にわたり、さらに経営者を始め管理職や担当者までの全員が、密接な連携のもとに品質管理を効果的に実施していく」活動である。
TQCは、アメリカのファインゲンバウムが提唱した言葉である。
出典:weblio辞書

すなわち、トヨタ自動車の豊田章男社長自らが言及するスローガン、『いいクルマをつくろうよ』の意味を理解する必要がある。組織員の気持ちを一つにすることが、品質管理には基礎であり最重要なのだ。

はて?? そういえば、現在、緊急事態宣言の中で「自粛要請」が出ているが、叫ばれているのが『国民みんなで心を一つに』である。

これこそ「ガバナンス」の必要性であり、「気持ち」なのだ。 そう、「新型コロナウイルス感染」対策は、自動車メーカーなど製造業が行っている「品質保証」対策と基本は同じ。

企業の品質管理担当者はこれをよく理解するといい。いや、どれほど少ない人数のグループリーダーにも、共通して言えることだろう。

※参考記事:【テスラは何を間違えたのか(2)】命令で品質管理はできない! 人格の尊厳が品質を造る(知恵の輪サイト)

※参考記事:【韓国サムスン電子 スマホ発火】品質管理の本質[1](知恵の輪サイト)

※参考記事:【ホリエモンの挑戦!】「MOMO(モモ)3号」打ち上げ成功!成功し続けられるかは「品質保証」にかかっている!(知恵の輪サイト)

 

推薦したい書籍(品質管理のはなし)

↓↓↓専門家会議で話題の”8割おじさん”(西浦教授)は統計学の数理モデルを使って「実行再生産数」なるものを出していますが、製造業の品質管理にも統計学は使われています!!!

↓↓↓TQCは現在昔ばなしみたいにして言われることがありますが、品質管理手法すべての基本です!忘れてはなりません!組織のリーダーが人材教育(人づくり)をするときにも必須です!