【2016マツダ・アテンザ(1)】スカイアクティブ・テクノロジー

マツダ・スカイアクティブ・テクノロジー

トヨタのTNGAよりも一足早く、マツダは「スカイアクティブ・テクノロジー」を進めていました。アテンザは、その展開の結果であるのですが、少し規模の小さなマツダでは成果は如実に表れてきており、2015年を過ぎて第二段階に入っています。生産の平準化を進め、設備の稼働率を上げ、投資効率が向上しています。車が工業生産品である以上、これを知らずして車は語れません。
アテンザを取り上げて、車そのものの理解を進めましょう。




新型マツダ・アテンザのテクノロジー

アテンザは具体的に、どのようにしてコストを下げようとしているのでしょうか?

これには少々経理の知識が必要です。経費には固定費変動費があります。変動費は、生産量が上がれば材料費のような増えるコストで、生産量が下がれば減ります。固定費は生産量が変動しても、給料の基本給のように変動しないコストです。

なので、それまで増産してきて減産局面に入った場合、固定費が減らずに赤字転落になる場合がよく見られます。

そこで、経営者としてはどんなに増産していても、コストの固定比率を低く抑える努力が必要になるのです。

アテンザ・回生ブレーキ

出典:http://www.mazda.co.jp/cars/atenza/feature/driving/

平準化

そこで、コストの固定費を下げるには、「どの車種も同一の車種として生産できる」ことが重要になってきます。

「売れる車を作り、売れない車は作らない」とすると、車種ごとの専用ラインを持っていたのでは、販売の増減によって作れないときも出てきます。多くの車種を同一のラインで生産できるようにしておくと、全体量で調整が出来て、ラインの遊びがなくなってきます。

ちょっとここは、製造ラインを知らない人には想像できなくて難しいかもしれません。

しかし、これで生産の「平準化」が出来てきます。

すると、それまで最大生産量に合わせるしかなかった人員や設備が、機種ごとの最大量ではなく全体量での必要量にとどめることが出来ます。これが莫大な効果をもたらすのです。

皆さんの身近で分かりやすい例で言うと…

飲食業や観光業では繁忙期(時間)と閑散期(時間)の差が激しく、人員のシフトに苦労していますよね。これを平準化できると経営の効率化が進み、利益も得やすくなります。

この平準化による経理的効果が、マツダのスカイアクティブテクノロジーやトヨタのTNGAにはあるのです。平準化するためには、プラットフォームの共通化が要となります。

トヨタのTNGAが話題になった時は、一部の自動車ジャーナリストの中から「部品の共通化なんて、なんでつまらないことやるんだ?」というニュアンスの声が聞かれました。しかし、今は激動の時代、自動車メーカーでこの生産方式の変革ができないと存続の危機が訪れるかもしれません。

 

生産技術から見た共通部品

アテンザ・高張力鋼ボディー

出典:http://www.mazda.co.jp/cars/atenza/feature/skyactiv/

では、実際にどうやってプラットフォームの共通化を行うのでしょうか。

まず考えられるのが、エンジンなどのシャーシの共用化です。エンジンの共用化は排気量が違ってもかなりの部分で可能です。ミッション、サスペンションも共用化が進んでいます。

 

モノコックボディーについても、マツダは、共通化で構造の基本を変えずに板厚(鋼板などの厚さ)を車種によって変化させることで、重量と強度のバリエーションを作っています。生産ラインとしては、「同じ部品」」として扱うことが出来るので効率化が望めます。多種少量生産に徹した全製品についての共用化を進めているのです。

マツダの苦労がしのばれますが、より規模の大きなトヨタでは、どのように組織を動かしているのかを含めて膨大な管理技術の投入が必要でありましょう。

 

アテンザの商品力向上

マツダ・アテンザ・トップ

出典:http://www.mazda.co.jp/cars/atenza/accessories/

アテンザは2012年にフルモデルチェンジが実施されましたが、その際に従来の部品構成に束縛されることなく新技術を投入できたのは、生産方式が大きく貢献しています。内装は大きく変更されているのですが、コストアップを招きません。

現代のクルマに必要な電子制御装置を最新にすることは、商品価値に大きく影響しますので、内装部品を短いサイクルで新装置に合わせることが出来ることは、商品力にとって絶大な威力となります。生産方式の進歩が技術力全体の進歩を速めているのです。・・・次へ、【マツダ・アテンザ(2)】注目のスペックは?➡

【マツダ・アテンザ(3)】G-ベクタリング・コントロール(GVC)[1]➡
【マツダ・アテンザ(5)】燃費[1]➡